本年度はまず、ZnOナノロッドのエタノール検知特性を明らかにすることを目的として、種々の実験を行った。ZnOナノロッドのHAADF-STEM像より、ZnOナノロッドの主結晶面(主露出面)がm面(10-10)であることが明らかになった。また、吸着測定およびTPD測定の結果より、ZnOナノロッドとエタノールの親和性が、市販のZnOナノ結晶よりも高いことが示唆された。ガスセンシング測定の結果、ZnOナノロッドが市販のZnOナノ結晶と比較して、エタノールとアセトンに対して約2倍のセンサ応答を示した。In-situ DRIFTS測定結果より、エタノールの酢酸種への変換および吸着が、ZnOを用いたエタノール検出において重要な要素であることが示唆された。さらに、検出された各種吸着物がZnOの電気的特性に与える影響を、DFT計算を用いて調査した。その結果、アセトアルデヒドおよび酢酸種の生成および吸着が、ZnOの導電率を低下(センサ応答を向上)させる要因であることが明らかになった。本結果をまとめて論文投稿を行った。 次に、Pt担持ZnOナノ結晶のガス検知におけるPtと酸素種の影響を精査するため、N2中における各種Operando測定を実施した。これまで、半導体ガスセンサのガス検知において、材料表面の吸着酸素の消費が重要であるとされてきた。しかし、N2中におけるOperando DRIFTS測定の結果より、ZnOの格子酸素の消費が示唆された。材料の還元(格子酸素の消費)はPtの担持量が多いほど促進され、格子酸素の消費がZnOのガス検知において重要な要素であることが示唆された。さらに、エタノール燃焼の際の中間生成物であるアセトアルデヒドや水素も、ZnOの導電率の低下に寄与していることが明らかになった。
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