尿産生機能をもつ腎臓オルガノイドは、慢性腎臓病に対する新規治療法の基盤となる。腎臓では、尿産生の基本単位であるネフロンが規則正しく並び、樹状分岐する集合管と接続する。この樹状分岐構造によって尿が集約され、尿管へと排泄される。したがって、機能する腎臓オルガノイドを創出するには、この構造の再現が不可欠である。所属研究室ではマウスでその再現に成功した一方で、ヒトにおける再現には至っていなかった。 当該年度では、マウスとヒトの腎臓前駆細胞から作製するキメラ腎臓オルガノイドを評価系として用いながら、シングルセルRNAシークエンス解析から得られた手がかりをもとに、二種類のヒト腎臓前駆細胞の誘導を最適化した。UMAP上で一致する程度まで遺伝子学的類似性を高めることができた。その結果、腎臓発生上重要ないくつかの構造の再現に成功した。今後は培養条件に検討を加えることや第三の間質前駆細胞を組み合わせることで、完全にヒトiPS細胞由来の腎臓オルガノイドに樹状分岐構造を付与することを目指す。
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