令和4年度は、腸管出血性大腸菌O113株が産生するタンパク質毒素(SubAB)のBサブユニット(SubB)の細胞接着性に着目し、高く広い抗菌スペクトルを持つ銀ナノプレート(AgNPLs)に修飾することで細胞内寄生菌に対する抗菌材としての応用を試みた。AgNPLsは湿式還元法にて作製した。Agとチオールが吸着しやすいことを利用して、チオールとカルボキシル基を末端に持つポリエチレングリコール(SH-PEG-COOH)を修飾(PEG-AgNPLs)した。AgNPLs表面のカルボキシル基をニトリロ三酢酸誘導体とニッケルの配位錯体にて化学修飾し、さらにHis-tag介してSubBを結合させた。SubBを修飾したAgNPLs(SubB-AgNPLs)はPEG-AgPLsよりも分散安定性・抗菌性・細胞内取り込みを増強することが確認された。PEG-AgNPLsは細胞内に寄生したサルモネラ菌に対する抗菌性はほとんど示さなかったが、SubB-AgNPLsはサルモネラ菌の生存率を83%減少させた。さらに、興味深いことにサルモネラ菌が感染している細胞のほうが非感染細胞よりもSubB-AgNPLsをより多く取り込むことがわかった。
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