造血幹細胞は全ての血液細胞を作りだすことのできる細胞であるものの、通常はほとんど増殖しない静止期にあることが知られている。正常な造血を維持するためには、造血幹細胞の分化・増殖が適切に制御されていることが重要である。放射線や抗がん剤治療、感染症といった様々なストレスによって血液細胞の減少が起きた場合、造血幹細胞はその自己複製能と多分化能を活性化し、活発に増殖することにより血液細胞を再構築することが知られている。しかしながら、ストレス環境下における造血幹細胞の分化・増殖と造血再生の分子基盤については未解明な点が多い。本研究では「ストレス造血におけるエピゲノム制御を介した幹細胞運命決定と造血再生機序」の解明を目的とした。これまで、遺伝子改変マウスを用いてin vivoでの骨髄再構築能を検証するとともに、造血幹細胞を用いてトランスクリプトーム解析・エピゲノム解析を行っており、造血幹細胞における遺伝子発現制御機構と個体の造血維持のメカニズムについて包括的な理解を進めている。
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