2021年度の前半は新型コロナウイルスCOVID-19の感染拡大に伴って出張が制限されていたため、沖縄県内で採集したミナミメダカ(Oryzias latipes)野生個体を中心とした研究を行った。また、青森で採集されたキタノメダカ(O. sakaizumii)野生個体も比較対象として使用した。採集した野生個体は約1か月間、一定環境で飼育して馴致した。ミナミメダカ15ペア、キタノメダカ5ペアをつくり、ペアごとに受精卵を得た。受精卵および孵化した仔魚について、純水に複数の元素を添加して調整した水を用いて共通環境実験を行った。孵化後約60日後に実験個体を採集して、標準体長と体重を測定・計量した。また、左右の耳石扁平石を摘出して、耳石重量を計量した。所属機関による出張制限が緩和された9月以降に、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いた耳石の微量元素分析のため、外部研究機関へ出張した。耳石の分析に先立ち、EPMAの測定誤差を減らすために、最適な測定電流や分析径、分析スポット等の測定条件の最適化を行った。最適化した測定条件を用いて、耳石中に含まれるカルシウム(Ca)とストロンチウム(Sr)の濃度を測定した。耳石Sr/Ca比を比較した結果、ミナミメダカとキタノメダカでは、耳石Sr/Ca比が大きく異なることが明らかとなった。 2021年度は、出張制限や地震によるEPMAの故障等により、実験に用いる個体群や分析数が制限された。次年度は、新たな地域個体群を採集して同様の実験を行うことにより、種間や家系間における耳石Sr/Ca比のばらつきの要因について詳細に解析する予定である。
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