2022年度は、2021年度に引き続き、野外で採集した個体を親魚として用いた飼育実験と耳石扁平石の微量元素分析を中心とした研究を行った。千葉県および茨城県でミナミメダカ(Oryzias latipes)の成魚を採集した。2021年度と同様に、採集した個体を1か月ほど一定水温で飼育して馴致した後、これらの個体を親魚として、昨年と同様の共通環境実験を行った。千葉県産ミナミメダカ5ペアと茨城県産ミナミメダカ3ペアについて、ペアごとに受精卵を得て、孵化仔魚を水中の微量元素を一定に調整した水で飼育した。孵化後約60日後に実験個体を採集して、標準体長と体重を測定・計量した。また、左右の耳石扁平石を摘出して、耳石重量を計量した。電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて耳石中に含まれるカルシウム(Ca)とストロンチウム(Sr)の濃度を測定した。耳石Sr/Ca比を、家系間および地域個体群間、さらには昨年度得た沖縄県産ミナミメダカと青森県産キタノメダカ(O. sakaisumii)のデータと比較することで、耳石Sr/Ca比のばらつきが家系間、地域個体群間および種間でどのように異なるのかを調べた。その結果、千葉県産と茨城県産のミナミメダカの耳石Sr/Ca比はよく似た傾向を示したものの、その値は沖縄県産ミナミメダカや青森県産キタノメダカの値とは大きく異なっていた。また、個体によってもSr/Ca比が大きく異なる傾向を示したため、次年度は、近交系を用いて同様の実験を行うことにより、耳石Sr/Ca比のばらつきの実態を明らかにする予定である。
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