動物の模様には多様なパターンがあり、それは様々な分類群で見られる。そのパターン形成メカニズムを明らかにすると、どのようにして多様なパターンが進化してきたかを理解できるのではないだろうか。メカニズム解明には、「模様のできる範囲がどのように決まるのか?」を明らかにすることが鍵である。理論レベルでは、分子の拡散によって模様の形成される範囲が決まると考えられてきており、ミズタマショウジョウバエではWinglessタンパク質が発現場所から拡散して模様の範囲を決めると想定されてきた(Werner et al. 2010 Nature)。拡散因子の拡散具合は温度に依存することがあり、それが模様の範囲の決定に影響することも考えられる。温度と模様の範囲の関係性を調べることも「模様のできる範囲がどのように決まるのか?」の解明に必要と考えたので、ミズタマショウジョウバエを用いて模様の範囲と温度の関係性を調べた。昨年度、模様の範囲と翅の大きさには温度による可塑性があり、それらの制御機構が独立していることが示唆される、という結果が得られた。論文として投稿して査読される過程で、査読者から別の解析方法を提案されてその方法を試した結果、個々の水玉模様によって反応基準(reaction norm)が異なり、ものによってはほぼ可塑性を示さないことが明らかになった。そして、その結果も加えてDevelopment Genes and Evolution誌で発表した。
|