研究課題/領域番号 |
21J21182
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
新堀 雄麻 東京都立大学, 大学院 都市環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | リチウム金属二次電池 / リチウム金属負極 / セパレーター / イオン液体 / イオンゲル / ゲルポリマー電解質 |
研究実績の概要 |
本研究課題はリチウム金属負極―酸化物系固体電解質間に短絡防止層を導入することでリチウム金属二次電池のサイクル安定性の向上を図るものである。令和3年度ではまず短絡防止層の最適化に関して研究を行った。短絡防止層には当研究グループが開発を行ってきた三次元多孔構造ポリイミド(3DOM PI)セパレータを用い、また3DOM PIセパレータ内に含浸させる電解質として不燃性であるイオン液体系電解液を用いた。この3DOM PIセパレータは内部に三次元的で均一なマクロ孔を有することから、均一なイオン伝導パスの形成および負極表面上に均一なリチウム金属の析出が期待できる。そこで実際にLi||CuセルおよびLi||Liセルを作製し、リチウム溶解析出試験を行った。また、現在イオン液体系電解液で最も充放電特性が良好であるとされるポリプロピレンセパレータと3DOM PIセパレータとの比較を行うことで、3DOM PIセパレータが短絡防止層として有用であることを評価した。Li||CuセルおよびLi||Liセル共に1 mA cm-2の電流密度で1 mAh cm-2の溶解析出試験を行った。Li||Cuセルではポリプロピレンセパレータより3DOM PIセパレータの方が0.2%程度のクーロン効率の向上および2倍以上のサイクル特性を示した。さらにLi||Liセルでも3DOM PIセパレータの方が良好なサイクル特性および負極―電解液界面安定性を示した。以上の結果より、3DOM PIセパレータは短絡防止層としての効果が十分に期待できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画としては、初年度である令和3年度は3DOM PIセパレータの短絡防止層としての有用性の確認および含浸させたイオン液体系電解液のゲル化を行う計画であった。しかしながら、イオン液体系電解液のゲル化は未達成である。一方で最終年度の計画であったラミネートセルでの評価を繰り上げて令和3年度に行った。 固体電解質は円形にペレット成形するためラミネートセルでの評価が行われることが少ない。しかしながら、リチウム金属負極は電極に加わる圧力およびその均一性がとても重要であることが明らかになりつつある。そこでセルに加える圧力を規定および均一にしやすいラミネートセルでの評価が重要となる。本研究課題では固体電解質を使用する過程になってから円形に対応したラミネートセルの作製・評価を行う予定であったが、途中でのセル形状の変更は実験データの一貫性を損なうものと判断し、計画を繰り上げ令和3年度に行った。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度では当初の計画を一部変更したため、イオン液体系電解液のゲル化が未だ行えていない。そこで次年度はイオン液体のゲル化およびそのリチウム溶解析出特性の評価を行う。この段階で負極―短絡防止層界面の評価は十分であると考えられるので、その後は短絡防止層―酸化物系固体電解質界面の調査を行う。具体的にはイオン液体系電解質と酸化物系固体電解質との安定性の確認や界面形成、また実際に溶解析出試験やフルセル評価などを行う計画である。
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