研究課題/領域番号 |
22J11897
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
藤近 敬子 東京都立大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 生殖休眠 / 環境適応 / 時計遺伝子 / CRISPR-Casシステム / 季節適応 |
研究実績の概要 |
休眠は昆虫の季節性環境への適応機構であり、休眠誘導機構は日長の変化という環境シグナルの感知により開始する。昆虫には他の生物と同様に概日リズムがあり、リズムの形成は光が影響するため、リズムを形成する時計遺伝子との関連性が示唆されている。しかし、時計遺伝子の休眠誘導機構への介在の詳細を実験的に明らかにした例はない。本研究では、時計遺伝子の研究が最も進んでおり、野外での休眠が報告されているオウトウショウジョウバエとノハラカオジロショウジョウバエの休眠系統と非休眠系統で、まず6つ時計遺伝子の振動パターンの比較を行った。結果、CG3234の振動パターンが休眠系統と非休眠系統でパターンが2種で同じように異なったため、この遺伝子に着目した。今後は、この遺伝子をノックアウトした個体の休眠形質の観察を行い、休眠誘導機構への時計遺伝子の介在を分子レベルで明らかにすることを目指している。 また、CG3234は先行研究で季節の感知に関与しているタンパク質EYAの安定化にアイソフォームが寄与していることが明らかになっている。そこで、本研究でもノハラカオジロショウジョウバエでアイソフォームを調査した。結果、休眠系統と非休眠系統で3'UTRの長さが異なるアイソフォームが存在することが明らかになった。また、見つかった3つのアイソフォームについて発現定量を行い、休眠系統では先行研究と同じようにアイソフォームの発現が変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初に計画していたオウトウショウジョウバエだけではなく、表現型がより明確な種であるノハラカオジロショウジョウバエの休眠系統と非休眠系統の6つの時計遺伝子の振動パターンを調査することができた。結果、オウトウショウジョウバエでもノハラカオジロショウジョウバエでもCG3234の振動パターンが休眠系統と非休眠系統でパターンが同じように異なった。そのため、CG3234に着目することができ、ノックアウト個体の作成に着手することが可能となった。また、すでにノックアウト個体の作成に必要な採卵方法の確立やインジェクション方法の確立も実施することができている。 加えて、ノハラカオジロショウジョウバエを用いてCG3234のアイソフォームを調査したところ、休眠系統と非休眠系統で3’UTRの長さが異なるアイソフォームが存在することが明らかになった。先行研究でCG3234のアイソフォームは季節感知に関与すると考えられているタンパク質の安定化に寄与しているため、表現型との相関があるのかを今後調査していきたいと考えている。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続して準備を行っているノックアウト個体の作成に本格的に着手する。インジェクションするベクターや蛍光マーカーをノックインするためのベクターを用意し、外部委託しつつ自分でもインジェクションを行うことでより短期間で作成することを目指す。ノックアウト個体が作成でき次第、系統化し表現型解析を行う。表現型が期待通りであれば、バックグラウンドに使用していない系統と掛け合わせてHemizygosity testを行う。 また、昨年度に明らかになったアイソフォームと表現型の相関に関してより詳細に調査するため、日本各地のノハラカオジロショウジョウバエ15系統をストックセンターや他研究室から分譲していただいた。15系統の表現型解析とシーケンス配列を比較し、相関があるのかを調査する。
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