研究課題/領域番号 |
22J22955
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
林 昌子 東京都立大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
キーワード | 社会思想史学会での研究報告 / 人体科学会での研究報告 / オックスフォード大学でのシンポジウムに参加 / トーニー関連の文献読み込み |
研究実績の概要 |
2022年年度は、2024年1月の博士論文予備審査申請を念頭に、博士論文計画書の草案作成に向けて資料の収集と多読を中心に研究を行った。その中で、研究軸となり得る重要な文献については精読を行った。また、2022年秋に行われた2つの学術大会における報告を軸として、R・H・トーニーに関する第1資料および第2資料や、キリスト教社会主義に関する書籍・論文の収集と精読を中心に行い、基本文献の読み込みと参考文献リストの充実に力を注いだ。具体的には以下の2つである。 1 社会思想史学会 第47回大会「R・H・トーニー『平等論』の背景:イギリス福祉国家揺籃期の社会思想」 2 人体科学会 第32回大会「初期イギリス福祉国家におけるキリスト教社会主義」 11月にはオックスフォード大学ベリオール校で開かれた、ウィリアム・テンプル財団主催のオックスフォード大学ベリオール校におけるシンポジウムRe-Envisioning the British State in a Time of Crisis: A Critical Revisiting of the Balliol Connection of Temple, Tawney & Beveridge for the 21st Centuryに、日本のトーニー研究従事者としてお誘いを受け会議に参加し、ベリオール校校長先生はじめ、トーニー研究者、テンプル研究者等のイギリスの福祉国家研究に関わる研究者たちとのアカデミックな交流を深めることができた。 年明けから最近は、キリスト教社会主義について、トーニーと日本の賀川豊彦との比較によって福祉国家の思想的土台について考察するため、どのような方法論を採用すべきかを検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申告内容ファイルでの計画では、1年目の2022年度は、「WEAや「左派キリスト者」へのトーニーの貢献と、それらの団体の現在についての考察を行う。加えて、翌年に予定のイギリスにおける現地調査の準備を練り上げる。それとともに、現在、福祉国家の可能性として注目される社会投資論との関連について、日本社会福祉学会の学会誌への掲載を目指し、学会での発表を行う」と記した。まず、トーニーおよび福祉国家に関する文献研究という点では、1年目としての十分な資料の収集、精読を行うことができた。そして2つの学会の研究大会で、研究発表を行うことができた。オックスフォード大学でのシンポジウムへの参加への誘いは、2022年秋に急遽出てきた話であったが、参加することで研究のコアとなる研究者たちとの交流を深めることができた点は、想定外の成果であった。 本年度の留学のための準備という点でも、留学先の指導教授、学科、事務方(大学の国際課)との密な連絡を行い、現在、イギリス側の受け入れ態勢は十分な状態である。後は在籍本学への留学のための経済援助申請を行う段階にある。 来年(本年度)1月に予定している博士論文予備審査申請のための準備も順調に進んでいる。 一方、学会誌への論文投稿については、予定していた日本社会福祉学会とは異なった学会である人体科学会への投稿となった。査読の結果「修正の上、掲載」と伝えられているので、近日中に修正の上、再投稿することになる。 以上総合的にみて、現在までの進捗状況は「おおむね順調」と評価できるのではないかと思う。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度前半は、人体科学会への修正論文の投稿、東アジア実践神学会(香港)での研究報告、日本社会思想史学会への論文投稿を軸として研究を進める。その中でも、6月の東アジア実践神学会主催の研究大会での研究報告の機会は、2022年3月にイギリス・カンタベリーでの研究大会で知己となったケンブリッジ大学の大学院生(当時)を介して、同年秋、東アジア実践神学会から国際連携研究員への就任へのオファーがあり承諾したのだが、その立場としての初めての学的貢献となる。 2023年度後半は、ロンドン大学ゴールドスミス校で客員大学院生として研究を進める予定である。日本で未発表のトーニーとその周辺の一次資料をロンドンを中心に収集する。対象となる主な図書館・アーカイブは同校の他、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、ロンドン・メトロポリタン大学、英国図書館、ランベス宮殿図書館、オックスフォード大学である。ウィリアム・テンプル財団の研究部長でもあるゴールドスミス校の指導教授からは、ゼミで進捗報告を行うことの他に、テンプル財団のために論文、書評、評論文を1本ずつ投稿するように指導を受けている。また、トーニー創立に関わった諸団体、「キリスト教社会主義運動」(現・「左派キリスト者(Christians on the Left)」)の関係者たちとの面会を通して、トーニーの社会思想と現在の地域福祉への貢献の関係について調査を行うことになる。 留学中における日本の大学との関わりについては、12月の研究報告会を経て、翌年1月に博士論文作成計画書を提出し博士論文予備資格の申請を行う予定である。
|