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2021 年度 実績報告書

転写制御因子を標的とした核酸型分解誘導剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21J23036
配分区分補助金
研究機関横浜市立大学

研究代表者

永沼 美弥子  横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワードプロテインノックダウン / PROTAC / ユビキチン-プロテアソームシステム / 転写因子 / デコイ核酸 / エストロゲン受容体α
研究実績の概要

様々な疾患の発症に関与する標的タンパク質が解明され、それらを標的とした多様な創薬手法が開発されてきた。その中でも近年、PROTAC(Proteolysis-Targeting Chimera)に代表されるケミカルプロテインノックダウン法を利用した創薬研究が盛んに行われている。PROTACは、疾患関連タンパク質(POI)を生体内のタンパク質分解機構であるユビキチン-プロテアソームシステム(UPS)を利用することによって分解誘導できる。現在、国内外で精力的に開発されているPROTACであるが、標的とすることが困難なタンパク質も存在する。例えば、重篤な疾患に関与する転写因子(TF)は、最適なリガンドが存在しないものも多く、従来の低分子型PROTACデザインが困難である。一方で、転写因子にはDNA結合領域が存在することから、この領域に結合可能な分子であるデコイ核酸を新たなPOIのリガンドとして利用することで、TFの分解誘導が可能になると期待される。
そこで本研究では、コンセプト検証として、既に低分子型PROTACが開発されており、核内受容体スーパーファミリーの一員であるエストロゲン受容体α(ERα)をモデルタンパク質とし、ERαに結合するデコイ核酸をリガンドとした核酸型PROTACの開発を行った。具体的には、ERαのリガンドとして末端をアルキン修飾したデコイ核酸、および汎用されるE3リガーゼリガンド(LCL161、VH032、Pomalidomide)にアジド基を導入した3種類のリガンドをそれぞれ設計-合成した。これら2つの分子について銅触媒を用いたクリック反応により連結させ、核酸型PROTACを合成した。各PROTACのERα結合活性は競合的な蛍光偏光アッセイによって評価し、ERα分解誘導活性について、乳がん細胞株MCF-7細胞を用いたウェスタンブロッティングにより評価した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ERαをモデルタンパク質とし、ERαに結合するデコイ核酸をリガンドに用いた核酸型PROTACの開発を行った。ERαのリガンドは、DNAとERαの共結晶X線構造およびエストロゲン応答配列を基に21塩基のデコイ核酸配列を選択し、その5’末端をアルキン修飾した。また、汎用されるE3リガーゼリガンド(LCL161、VH032、Pomalidomide)にアジド基を導入した3種類のリガンドをそれぞれ設計-合成した。これら2つの分子について銅触媒を用いたクリック反応により連結させ、核酸型PROTACを合成した。各PROTACのERα結合活性は競合的な蛍光偏光アッセイによって評価し、デコイ核酸単体と同等のERα結合活性を有することが明らかとなった。さらに、ERα分解誘導活性について、乳がん細胞株MCF-7細胞を用いたウェスタンブロッティングにより評価した。その結果、各PROTACにおいてLCL体が最も高い分解活性を示し、その分解メカニズムは期待通り、UPSを介していることが示唆された。また、PROTACのERαシグナル伝達に対しての影響をレポータージーンアッセイにより評価した結果、デコイ核酸と比較し有意に転写活性化を阻害することが示唆された。さらに、細胞増殖抑制評価より、PROTACによってERα陽性乳がん細胞株MCF-7細胞の増殖が抑制されたことが示された。以上より、本年度では、研究計画通り分子設計-合成を行い、各種活性を評価することで、コンセプト検証を達成した。また、本研究成果は、国際学会誌である「ACS Medicinal Chemistry Letters」に掲載された。

今後の研究の推進方策

2022年度は、前年度と同様にエストロゲン受容体(ERα)を標的とした核酸型分解誘導剤の開発を行い、ERαリガンドの構造最適化を行う。具体的には、ERαリガンドの配列の最適化を検討する。また、ホスホロチオエート化した修飾核酸を導入することでデコイ核酸の化学的安定化をはかる。さらに、オリゴ核酸の細胞内輸送キャリアとして汎用される細胞膜透過性ペプチドとデコイ核酸の連結や複合体形成を検討することで遺伝子導入剤なしで機能する分子の開発を行う。また、リンカー構造として、既存のタンパク質分解誘導剤で頻用されるポリエチレングリコール鎖やアルキル鎖に加え、アミド等、柔軟なものから比較的剛直なものについての検討を行う。
さらに、ERα分解誘導剤と同様の方法で、キメラ分子の設計/合成、各種評価を行うことによって、がん関連転写関連因子のHIF-1α、β-カテニン等を標的タンパク質とした核酸型分解誘導剤の開発への応用を目指す。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Development of Chimeric Molecules That Degrade the Estrogen Receptor Using Decoy Oligonucleotide Ligands2022

    • 著者名/発表者名
      Naganuma Miyako、Ohoka Nobumichi、Tsuji Genichiro、Tsujimura Haruna、Matsuno Kenji、Inoue Takao、Naito Mikihiko、Demizu Yosuke
    • 雑誌名

      ACS Medicinal Chemistry Letters

      巻: 13 ページ: 134~139

    • DOI

      10.1021/acsmedchemlett.1c00629

    • 査読あり
  • [学会発表] デコイ核酸をリガンドとしたエストロゲン受容体分解誘導分子の開発2022

    • 著者名/発表者名
      永沼美弥子,大岡伸通,辻村はるな,松野研司,内藤幹彦,井上貴雄,辻厳一郎,出水庸介
    • 学会等名
      日本薬学会第142回年会
  • [学会発表] デコイ核酸をリガンドとしたエストロゲン受容体分解誘導剤の創製2021

    • 著者名/発表者名
      永沼美弥子,大岡伸通,松野研司,内藤幹彦,井上貴雄,辻厳一郎,出水庸介
    • 学会等名
      新学術領域研究「ケモユビキチン」第4回若手主体発表会

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公開日: 2022-12-28   更新日: 2023-08-01  

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