Brassica rapa に属するカブ品種「アカマル」は、光非依存的なアントシアニン蓄積 (LIA: Light Independent Anthocyanin) 機構を有し、根茎肥大部の表皮全体、すなわち、地上部および地下部の両方において、アントシアニン系色素を蓄積する。これまでに、アカマルに対し非LIAタイプの品種「金沢青カブ」および「日野菜」をそれぞれ交雑した後代における遺伝解析から、アカマル由来の劣性LIA原因遺伝子領域qLIA7を同定した。本年度は、アカマルにおける LIA 機構におけるqLIA7の寄与の解明を目的として、まず、準同質遺伝子系統 (NIL) を育成し、表現型を観察した。次に、NILの根茎肥大部表皮組織の発現解析およびメチローム解析を実施した。 まず、LIAにおけるアカマル由来qLIA7 (qLIA7-A) の効果を確認するため、金沢青カブ遺伝背景にqLIA7-Aを導入した「NIL496」を育成した。しかし、NIL496は、地上部のみが着色しLIAを示さなかった。一方、アカマルをNIL496および金沢青カブにそれぞれ交配して作出したF1世代では 、アカマルとNIL496間のF1のみがLIAを示したことから、LIAの発揮には、qLIA7-A以外のアカマル由来の優性遺伝子およびqLIA7-Aのホモ接合性遺伝子型の必要性が推察された。次に、日野菜由来のqLIA7 (qLIA7-H) をアカマル遺伝背景に導入した「NIL11」を育成した。NIL11は、qLIA7-Aを有していないにも関わらず、ほとんどの個体でLIAの発揮が確認され、一部の個体のみLIAを示さなかった。遺伝的に同質ゲノムを有する個体間で表現型が分離したことから、LIAにはエピジェネティックな制御の関与が推察された。次に、LIAにおけるエピジェネティックな制御の関与を確認するため、発現解析およびメチローム解析を行なった結果、LIAを示す個体の地下部では、アントシアニン生合成における正の転写因子BrMyb2が発現しており、第3エキソン由来siRNAの発現および第2-3エキソン領域の高度DNAメチル化が確認された。
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