[研究目的] 脳腫瘍の一種である膠芽腫は、ヒアルロン酸生合成/分解機構に関する恒常性の破綻と、それに伴う異常な血管新生により病態形成が進行する疾患である。しかし、膠芽腫患者に使用される血管新生阻害剤 (抗VEGF療法) はVEGF低下に伴う代償的な腫瘍増悪機構により生存期間を延長しないことが報告されており、腫瘍血管新生を標的とする新たな治療法が求められている。申請者らは、先行研究において、膠芽腫患者の脳に高発現するヒアルロン酸分解タンパク質HYBIDが病態進展を増悪させることを報告している。しかし、これまでの研究は、HYBIDのヒアルロン酸分子量制御機構には主眼を置いておらず、膠芽腫における最大の予後増悪因子とされる血管新生への影響は不明である。そこで、本研究では膠芽腫におけるHYBIDのヒアルロン酸分子量制御を介した腫瘍血管新生に与える影響を解明し、膠芽腫に対する有用な治療法としての可能性を検証することを目的とする。 [実験結果] まず膠芽腫細胞をマウス頭蓋内に移植し、膠芽腫マウスモデルを作製した。蛍光標識デキストランを全身灌流後、CUBIC法及びBABB法による脳組織の透明化を行い、腫瘍血管を3次元的に撮影することができた。現在、撮影機器及び撮影方法の条件検討を行っており、腫瘍血管の密度・血管径・分岐数を3次元的に評価する方法を構築している段階である。また、膠芽腫細胞株を用いた腫瘍オルガノイド作製も実施しており、十分な大きさの腫瘍オルガノイドが形成されることを確認した。今後、腫瘍オルガノイド含むマトリゲル上に蛍光標識血管内皮細胞を播種する方法及び腫瘍オルガノイドをマウスの脳表面に移植し、マウス由来血管をオルガノイドに引き込む方法 (クラニアルウィンドウ法)を用いて腫瘍オルガノイド内に血管新生を生じるモデルを作製する予定である。
|