研究課題/領域番号 |
21J23302
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
大岡 央 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 肝線維化 / 肝星細胞 / 細胞内シグナル伝達 / 低分子化合物 / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
肝線維化とは肝臓内にコラーゲンが過剰に蓄積した状態であり、肝線維化が進行した肝臓では肝疾患が不可逆的に進行してしまうため、肝線維化の予防・治療法の開発が強く望まれている。肝星細胞(HSC)は肝臓に存在する細胞の1つで、肝臓が傷害を受けると活性化し、コラーゲンの産生が顕著に増大するため、肝線維化の原因細胞であると考えられている。しかしながら、未だHSCを標的とした肝線維化治療薬は存在しない。本研究では、先行研究においてHSCの活性化抑制作用を有することが示された粘菌由来低分子化合物DIF-1を用いて、新規肝線維化治療薬開発の基盤的知見を得ることを目指している。本年度は、in vivoにおけるDIF-1の抗線維化作用の検証およびin vitroにおけるHSC脱活性化作用の機序の解析を行った。 Thioacetamide誘発肝線維化モデルマウスを用いた検討を行った結果、DIF-1は肝線維化関連mRNA(Acta2, Col1a1, Timp-1)の発現を抑制した。これはDIF-1が生体でもHSCに作用し、抗線維化作用を発揮する可能性を示している。In vitroの検討においては、マウス初代培養細胞HSCを用いたDIF-1による活性型HSCの網羅的mRNA発現変動解析(mRNA-Seq)のデータから、カルシウム関連シグナルおよび免疫・炎症関連シグナルが顕著に変動していることが示唆された。また、DIF-1の活性部位を明らかにするためDIF-1の側鎖を置換・修飾したDIF-1構造類似体を複数作製し、TGF-β処置で活性化させたLX-2細胞(ヒト由来肝星細胞株)に対するHSC脱活性化作用を評価した。現在までに8種類のDIF-1構造類似体の検討を終えており、活性部位の候補を見出している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次計画通り、肝線維化モデルマウスに対するDIF-1の抗線維化作用の検証およびin vitroにおけるHSC脱活性化作用の機序の解析を行い、概ね計画通りに進行しているため。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度に引き続き、in vitroにおいてDIF-1の構造類似体を用いた構造活性相関解析を行い、より抗線維化作用の強いDIF-1構造類似体の探索およびDIF-1の標的分子の同定を行う。 本年度と同様、DIF-1側鎖の置換・修飾をしたDIF-1構造類似体を作製し、TGF-β処置で活性化させたLX-2細胞に対する作用を評価する。まず、LX-2細胞に対する各DIF-1構造類似体の細胞毒性をWSTアッセイにより評価する。次にHSC活性化マーカーであるⅠ型コラーゲンの発現をウェスタンブロット法により検出し、DIF-1構造類似体によるHSC脱活性化作用の検討を行い、HSC脱活性化作用を有するDIF-1構造類似体を選出する。 また、構造活性相関解析の結果に基づいて、DIF-1のHSC脱活性化作用に影響を与えないような側鎖を決定し、ビオチン化する。その後、アビジン・ビオチンシステムにより、ビオチン化DIF-1に結合するタンパク質を共沈降させ、このタンパク質をLC-MS/MS分析等で同定することでDIF-1の標的候補分子を特定する。さらに、既に実施しているマウス初代培養細胞を用いたDIF-1による活性型HSCのmRNA-SeqのデータとDIF-1の標的候補分子のデータを組み合わせることでDIF-1の脱活性化経路に関わる細胞内シグナル伝達経路を推定する。推定された経路の制御に関わるタンパク質のノックダウンおよび過剰発現を行い、DIF-1の脱活性化作用への影響を検討し、DIF-1の作用経路を明らかにする。
|