糖尿病とアルツハイマー病(AD)を関連づける新たな因子であるATBF1によるタウタンパク質のリン酸化制御メカニズムを解明するため、今年度はin vivo実験を行った。野生型マウスとATBF1ヘテロマウスの脳サンプルを用いて、ウェスタンブロットによりタウタンパク質のリン酸化に関わるタンパク質の発現レベルを検討した結果、野生型マウスに比べ、ATBF1ヘテロマウス脳内タウタンパク質のリン酸化レベルが有意に亢進していることを見出した。また、タウタンパク質のリン酸化を制御するリン酸化酵素JNK、ERKの活性化も有意に上昇した。しかし、PP1、PP2Aなどの脱リン酸化酵素のタンパク質レベルの変化は見られなかった。in vitro実験で得られた結果(ATBF1の発現変動がJNKとERKの活性化を影響すること)に踏まえ、ATBF1はJNKとERKの活性化を低下させることでタウタンパク質のリン酸化を抑制すると考えられる。野生型マウスとATBF1ヘテロマウスにストレプトゾトシンを投与し、インスリン欠乏型マウスを解析する予定であったが、ATBF1ヘテロマウスは死亡率が高いため、解析に十分な数のマウスが得られなかった。十分な数のATBF1ヘテロマウスを得てから解析する予定である。
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