研究課題/領域番号 |
22KJ2592
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 京都市立芸術大学 |
研究代表者 |
大熊 夏実 京都市立芸術大学, 芸術学専攻, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 西洋美術史 / イタリア・ルネサンス / ティツィアーノ / ラファエロ |
研究実績の概要 |
今年度には、およそ1ヶ月にわたってイタリア諸都市の美術館・博物館、聖堂、宮廷等を訪れ、本研究のメイントピックとなる作品を中心に実見調査を行った。また、国内では良いカラー図版が入手出来なかった作品について、全体写真および細部写真を撮影することが出来た。ティツィアーノ作品が飾られていたフェラーラのエステンセ城やマントヴァのパラッツォ・ドゥカーレでは、建築構造や各部屋のスケール感、扉の高さなどを実際に確認したほか、平面図が豊富に掲載されたカタログを入手した。また、マントヴァのテ離宮ではジュリオ・ロマーノによる壁画装飾を詳細に観察することができ、ティツィアーノの《マグダラ》とラファエロの《聖カタリナ》の事例研究を発展させるためのインスピレーションを得ることができた。両作には、右手で胸を隠し左手で下腹部を覆う聖女のポーズにおいて類似が指摘されるが、これは当時ローマで発掘され話題を呼んだ古代のヴィーナス像に由来するとされる。テ離宮の壁画において、ジュリオも同様のポーズのヴィーナス像を描いており(1526-28年)、ティツィアーノのローマ訪問(1545年)前の作品である《マグダラ》に少なからず影響を与えた可能性が考えられるのである。 また、《マグダラ》と《聖カタリナ》の事例研究のための事前調査として、中世から16 世紀における聖人半身像絵画の展開を整理し、ティツィアーノとラファエロによる聖女像の位置づけを検討した。その結果、半身像の聖人を表す単独の絵画形式そのものが16 世紀当時発展途上にあったことや、ヴィーナス像からの引用とされる聖女の腕のポーズが両作に特有のものであることが分かった。なお本リサーチ結果については、所属大学の紀要に投稿した。 その他、前年度にコロキウムで発表したティツィアーノの《コインを持つキリスト》について、英語論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で扱う重要作品の実見調査を行ったほか、今年度の取り組み課題であったティツィアーノの《マグダラ》とラファエロの《聖カタリナ》の事例研究に関して成果発表を行うことができた。また、博士論文の全体構想および2章分の執筆を行い、中間発表では博士3年次での提出に向けて先生方からご助言を頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、博士論文の執筆を中心に進める。また、次年度の夏頃に、博士論文のための補足調査として、イタリアの文書館等での史料調査を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入図書の発売延期により、前年度の購入予定を今年度に変更し、英文校正の謝金として計上していた分で補填した。英文校正費は自身で負担したため、若干の未使用額が生じた。該当助成金は、資料整理のためのファイル等文具類のために使用する予定である。
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