研究課題/領域番号 |
22J12994
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
竹下 直樹 京都府立医科大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 咽頭弓動脈 / レチノイン酸 |
研究実績の概要 |
胎児期に形成される左右6対の咽頭弓動脈は,出生までの間に複雑にリモデリングを受け,左右非対称な大動脈・肺動脈・動脈管へと分化する.そのリモデリングが異常に行われたり,本来起こるべきリモデリングが正しくおこらなかったりすることで,大血管系の構造異常を生じる.ヒトでは,出生後に手術が必要となることが多く,咽頭弓動脈のリモデリングの過程の解明は急務である.中でも,動脈管へと分化する第6咽頭弓動脈周辺にはレチノイン酸が集積する.レチノイン酸の代謝酵素ファミリー遺伝子の1つであるCyp26b1をノックアウトしたマウスでは,そのシグナルが第4咽頭弓動脈(将来の大動脈弓)にも集積する.第6咽頭弓動脈は出生後に閉鎖するが,第4咽頭弓動脈は大動脈弓を構成しており自然閉鎖することはない.しかしノックアウトマウスでは第4咽頭弓動脈が出生時には離断(大動脈離断)していたり狭窄(大動脈縮窄)していたりする所見を認めることがある. この第4咽頭弓動脈の変化とレチノイン酸のシグナルは無関係ではないと予想されるため,①咽頭弓動脈の形成・構造の詳細 ②咽頭弓動脈とレチノイン酸シグナルの空間的分布の関係 ③咽頭弓動脈周辺組織での遺伝子変動を確認するためのシングルセル解析を行うことで,レチノイン酸シグナルと咽頭弓動脈,とくに第4と第6咽頭弓動脈周辺で生じる遺伝子発現変動からレチノイン酸の果たす役割を解明することを目的としている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
・Cyp26b1ヘテロノックアウトの胚とレチノイン酸を追跡するRARE-laczレポーターマウスの胚の提供を受け,当学内で胚移植を行い実験動物系を維持する予定であったが,COVIDの蔓延により,学内の審査完了までに大幅に時間を要したため,モデル動物の系を確立するスケジュールに遅れが生じた ・その結果,胎生12.0日で咽頭弓動脈周辺組織のシングルセル解析を提出する予定であったが,そのスケジュールにも遅れを生じた. ・遅れを生じたが,サンプルを提出することはでき,解析を開始することができている.
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今後の研究の推進方策 |
左右非対称なリモデリングを生じるE12.0での血管構造・レチノイン酸シグナルの空間分布の把握,シングルセルサンプルの提出は終えることができた. シングルセルサンプルを今後解析していく中で,発現変動遺伝子を抽出し,影響の強いと予測される遺伝子は発現をin situ hybridizationで確認し,必要に応じてノックアウトの系を作成あるいは供与をうけて比較する必要があると思われる. 解析の結果から遺伝子発現の空間分布情報が必要と考えられる場合はVisiumの提出を検討する. あるいは時間分布が重要と考えられる場合は,ステージを変えて再度シングルセルサンプルを提出し,統合したデータで再解析を行う.
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