マウス胚E10.5付近で咽頭嚢に発現するレチノイン酸代謝酵素ファミリー遺伝子Cyp26の1つであるCyp26b1をKOすることで,咽頭嚢のレチノイン酸濃度勾配が変化することと,Cyp26b1をKOすることで将来的に大動脈離断や大動脈縮窄など第4咽頭弓動脈のリモデリングが変化することを前提として,レチノイン酸濃度勾配の影響が第4咽頭弓動脈のリモデリングに時空間的に変化を与えることを示そうとした.研究手法として,①複雑な咽頭弓動脈を3次元で観察する手法を構築し,レポーターマウスを用いてレチノイン酸分布を咽頭弓動脈の形態と関連付けること,②WTとKOマウスの咽頭弓動脈周辺組織を複数の時間軸でシングルセル解析を行うこと,を予定していた.しかしながら,Cyp26b1KOマウスでの大動脈離断や大動脈縮窄の表現型を呈する確率が当初期待されたより低く,強く影響を及ぼしているとは言い難い結果となった.一方で腕頭動脈の短縮や分岐角の変化が多くのKOマウスで認めらた.KOマウスではaortic sucから咽頭弓動脈分岐までの発育がWTと比較して短縮していることから,レチノイン酸濃度の上昇が咽頭弓動脈のリモデリングに何らかの影響を及ぼす可能性は依然として示唆された.当初の計画通り,咽頭弓動脈周辺組織を含むシングルセル解析とXeniumによる空間トランスクリプトームを提出し,今後は遺伝子発現変化や疑似時間解析などを行っていく予定である.着目する遺伝子が同定できれば,in situ hybridizaitonで局在を明らかにしていく予定である.①に関しての咽頭弓動脈を3次元で観察する手法に関しては,蛍光顕微鏡画像を三次元観察するためのボリュームレンダリングソフトウェアとして一般化し,論文投稿した.
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