研究課題
今年度も与えられたアーベル圏や完全圏や三角圏のよい部分圏の分類について研究を行った。特に、可換環やネーター環などの一般の設定で、加群圏上のねじれ自由類のクラスとIE閉部分圏のクラスがいつ一致するかという問題を考察し、プレプリントとして発表した。背景として、Iima--Matsui--Shimada--Takahashiにより、可換ネーター環上ではねじれ自由類はIKE閉部分圏(像・核・拡大で閉じた部分圏)と一致するのではないかという予想が提出されたが、これに対して、より一般にIE閉部分圏(像・拡大で閉じた部分圏)が常にねじれ自由類になる、という、予想のより強い形での証明を行った。その証明手法は、「IE閉部分圏はねじれ類とねじれ自由類の共通部分として表される」というアーベル圏の一般的な観察を通して行ったもので、アーベル圏の種々の部分圏についての新しい理解を見出したものである。また、以前に名古屋大学の酒井氏との共同研究で研究していた、アーベル圏のICE閉部分圏(像・余核・拡大で閉じた部分圏)についても加えて一般論の構築を目指した。以前の共同研究では体上有限次元な多元環しか想定しておらず、ICEの研究の鍵となった発見である「ICE閉部分圏はある広大部分圏のねじれ類として実現できる」事実の証明には、アーベル圏が長さ有限であるという性質を本質的に使ってしまっており、一般のネーター環上の加群圏などのアーベル圏においてこの事実が成り立つかは一つ課題として残っていた。これに対して、酒井氏や名古屋大学の斎藤峻也氏との議論により、一般のアーベル圏でも通用する新たな証明を与えることができた。このことから、有限次元多元環にとどまらない一般の環上でのICE閉部分圏の研究の糸口が初めて掴めたこととなり、今後はネーター代数上でのICE閉部分圏の理論が発展させていきたい。
H. Enomoto, IE-closed subcategories of commutative rings are torsion-free classes,arXiv:2304.032608, preprint.
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