研究実績の概要 |
研究開始までの準備期間に、合成細菌に遊泳運動を付与するスピロプラズマの6つの細胞骨格タンパク質(5つのMreB、フィブリルタンパク質)についてそれぞれの欠損株を作製し、光学顕微鏡観察、合成細菌に構築された運動の解析を行なった。フィブリルタンパク質欠損株においてもスピロプラズマとよく似たらせん状の細胞形態と動きがみられたことから、遊泳運動を駆動する力を発生しているのは細菌アクチンであるMreBである可能性が高いことが示唆された。そのため、初年度である2021年度はスピロプラズマの5種類のMreBに注目し様々な組み合わせで合成細菌に導入することで、らせん状の細胞形態や動きが再構築される最小の遺伝子セットを探索した。5つのMreBのどのMreBにおいても1つだけでは動きはみられなかったが、2種類の異なるMreBの組み合わせ10通りのうち4通りの組み合わせで、らせん形状と動きが再構築されることが明らかになった。スピロプラズマの5つのMreBはアミノ酸配列の類似性からMreB1-MreB4, MreB2-MreB5, MreB3の3つのグループに分けることができ、動きがみられたのは5-4, 5-1, 2-4, 2-1の4通りで、異なるグループに属するMreBの組み合わせのときのみであった。これらの結果を筆頭著者としてまとめたプレプリントが2021年11月にBioRxivに公開された。さらに学術雑誌に投稿し、現在審査中である。
|