研究課題
細菌アクチンMreBは多くの細菌に保存されており、通常は細胞壁合成装置の足場となって細胞の形態形成に関わる。細胞壁を持たないらせん菌スピロプラズマは、5種類持つMreB(MreB1-5)を利用して、細胞のらせんを交互に入れ替えながら遊泳運動を行う。これは、内因性の細菌アクチンを用いる唯一の生体運動機構である。所属研究室での研究によって、MreB5と、互いに系統的に近いMreB1とMreB4の組み合わせがスピロプラズマ遊泳運動に必須であることが示された。MreB5においては、令和4年度を含めた研究によって、その活性や構造が明らかにされてきた。しかし、MreB1とMreB4は可溶性のコンストラクトが存在せず、その実態は明らかではなかった。令和4年度において、MreB1にPrSという可溶化タグを融合させることでMreB1を可溶化することに成功した。令和5年度はPrSを融合させたMreB1を用いてその活性とMreB5への影響を調べた。MreB1はATPase活性と、ATP加水分解前後での繊維の不安定化の度合いが報告されている全てのMreBよりも高いことが明らかになった。これはMreB1がいずれのMreBよりも繊維中のサブユニットの交換が速いことを示唆している。超遠心による共沈実験により、MreB1はモノマーではなく重合したMreB5に結合することが分かった。様々なヌクレオチド状態における共沈実験により、MreB1はADPまたは加水分解されないATPのアナログであるAMPPNPによって重合したMreB5を不安定化させることが分かった。MreB1はスピロプラズマの細胞膜に多く存在する負電荷の脂質に結合した。以上の結果より、MreB1はその高い活性によって、膜直下でMreB5繊維に力を加えて運動を駆動する分子モーターである可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 299 ページ: 104793~104793
10.1016/j.jbc.2023.104793