研究課題/領域番号 |
22J21941
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
濱谷 将太 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / ジアリールベンゼン / 熱戻り反応 / 量子化学計算 / ジアリールエテン |
研究実績の概要 |
本研究では、6π電子系結晶高速T型フォトクロミック分子の基盤構築と応用開拓を目指している。特に、6π電子系フォトクロミック分子として、ジアリールエテンおよびジアリールベンゼンに着目している。T型フォトクロミック分子は、光照射によって着色し、着色異性体は光反応だけでなく、室温下で熱によっても元の無色状態へと戻る。T型フォトクロミック分子の実際の応用を考えた場合、用途に応じた熱戻り反応速度を有する分子を合成する必要がある。これまでに様々なT型フォトクロミック分子の熱戻り反応性が化学修飾によって変化することが報告されているが、分子設計時に熱戻り反応性を正確に予測することは容易ではない。本年度は、ジアリールベンゼンの溶液中における熱戻り反応の半減期を正確に予測することを目的に、ジアリールベンゼン誘導体の分子設計、合成、および特性評価を行った。実際に合成した種々の置換基を導入したすべてのジアリールベンゼン誘導体は、T型フォトクロミズムを示した。熱戻り反応速度を定量的に解析したところ、半減期が0.1から1500秒と様々な熱戻り反応性を有するジアリールベンゼンの創出に成功した。量子化学計算によって算出した活性化エネルギーは、実測値をよく再現することがわかった。また、熱戻り反応の頻度因子は分子によってほとんど変わらないことがわかった。その結果、量子化学計算によって算出した活性化エネルギーを用いることで、ジアリールベンゼンの熱戻り反応の半減期を定量的に予測する式を得た。このように、新規ジアリールベンゼン誘導体の活性化エネルギーが量子化学計算によって得られれば、熱戻り反応の半減期を正確に予測できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、結晶状態において6π電子環状反応を示す高速T型フォトクロミック分子の基盤構築と応用開拓を目的として研究を進めている。本研究の達成のためには、結晶状態における熱戻り反応に関する知見を得ることが必要である。上述したように、令和4年度では、種々の誘導体を合成することで、溶液中のジアリールベンゼンの熱戻り反応性を量子化学計算によって予測できることを見出した。このように、溶液中の熱戻り反応性を正確に予測することは、結晶状態で熱戻り反応性を制御することに大きく繋がると考えられる。さらに、P型フォトクロミック分子として知られるジアリールエテンの置換基を変調することで、新たな6π電子系高速T型フォトクロミック分子として機能することを見出している。これらの研究成果は今後の研究を推進するための重要な成果と考えられ、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、結晶状態において6π電子環状反応を示す高速T型フォトクロミック分子の基盤構築と応用開拓を目的として研究を進めている。令和4年度は、溶液中のジアリールベンゼンの熱戻り反応性を量子化学計算によって予測できることを見出した。さらに、新たな6π電子系高速T型フォトクロミック分子の創出に成功した。今後は、結晶状態の特性評価を行うことで、結晶状態のフォトクロミック反応挙動における知見を収集する。また、新たな高速T型フォトクロミック分子においては、溶液中および結晶状態の特性評価を行い、さらなる展開について検討する。
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