研究課題/領域番号 |
22J22889
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
米津 鉄平 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | プラズマ放電 / 有機物合成実験 / ミリ波-テラヘルツ波分光 / 量子化学計算 / 電波天文 / 星間化学 / 星間分子 / 超伝導デバイス |
研究実績の概要 |
本研究は、プラズマ放電による有機物合成実験に対するミリ波-テラヘルツ波の分光計測、量子化学計算による反応経路探索、電波望遠鏡による星間空間における観測を通して、星間核酸塩基の形成過程の解明に向けた前駆体の星間空間における形成過程の検証を目的としている。 本年度は、主にミリ波-テラヘルツ波のヘテロダイン分光によるプラズマ診断の完全自動計測の手法を確立した。また、これまで搭載していた素子と比較して、広い周波数帯域で受信機雑音温度が低い4 K冷却の超伝導SIS量子検出素子を搭載し、長時間計測やバンド特性の安定化・最適化を行なった。本実験ではプラズマで形成される分子種とその化学的環境の変化を捉えるべく、ガスを導入し放電し続けるが、その際には分光診断システムも温度ドリフトなどをするため、定期的な強度校正が重要となる。しかし、放電中はプラズマ放電/ガス導入を停止し、OFF点を計測することができないため通常の天体観測で使用される強度校正法を適用することが難しかった。そこで、背景光源以外のリファレンス温度を採用する改良型の強度校正法を開発した。これによりHCN分子などのスペクトルを長時間にわたって捉えることに成功した。放射輸送モデルを用いて、微量分子の物理量の導出も実現したため、現在投稿論文を作成中である。また、来年度以降に予定していた量子化学計算による反応経路の検証や、電波望遠鏡を用いた観測/解析も並行して推進した。本年度は、反応経路探索計算によって見つかる膨大な数の反応経路から目的とする経路を抽出するアルゴリズム/プログラムを開発した。加えて、大型ミリ波望遠鏡Large Millimeter Telescope(LMT)50 m鏡に搭載した2 mm帯SIS受信機Band 4 Receiver(B4R)で得られた試験観測時のデータ解析を担当し、上記関連分子に着目した投稿論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分光システムの完全自動化により、ダストプラズマ内で形成される中性ガス/分子の時間変化の追尾も可能となり、有機分子が合成される化学的環境や物理的環境の解明に取り組んでいる。量子化学計算による反応経路探索結果の解析アルゴリズム/プログラムの開発も目途をたてることができ、また、LMT望遠鏡を用いた関連分子の解析を進め、これについても論文化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度改良したプラズマ分光診断システムを用いて、前駆体の分子輝線のサーベイを推進していく。また、形成された有機物について再現性を確認し、より広範にLiquid Chromatography /Mass Spectrometry(LC/MS)解析を実施していく予定である。これにより、生体関連分子の量子化学計算による反応経路探索結果と比較することで、核酸塩基などの化学的・物理的な形成過程の解明を推進していく。また、そこで同定された関連分子種をターゲットとした電波望遠鏡による観測を提案/実施すると共に、大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMA(Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)のアーカイブデータの調査/解析も並行して進め、生体関連分子が形成されやすい環境を探る。
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