研究課題/領域番号 |
22J14894
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
谷口 彩乃 高知工科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | ソルボサーマル反応 / 複合金属酸化物 / 多孔体 / ナノ粒子 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本申請課題では,ソルボサーマル法を駆使することで,高次構造・複合状態が任意にデザインされた複合金属酸化物構造体のワンポット合成法の構築を目的としている。様々な用途で広く利用される機能性ナノ粒子は,その多くが多数の成分から構成される複合材料 (コア-シェル粒子,担持金属触媒,固溶体など) であり,その高次構造や複合状態は材料の性能に大きく影響する。したがって,目的の構造を持つ複合材料を少ない工程で簡便に合成する技術の確立は重要である。 2022年度は,混和しない二種類の溶媒それぞれに異なる金属源を溶解し,二層に分かれた前駆溶液をソルボサーマル処理することコア-シェル構造の複合金属酸化物構造体の合成を試みた。コア金属にCe,シェル金属にFeあるいはSnを選択し,FeOx@CeO2-xとSnO2@CeO2-xの合成を目指して反応条件を検討した。金属源の溶解度の点から,アセトニトリル/トルエン系やアセトニトリル/ヘキサン系を選択し,加熱条件 (昇温速度,温度,時間) を種々変更して生成物の構造に与える影響を調べた。条件検討の結果,FeOx@CeO2-xにおいては,球状構造体の形成には至ったものの,均一複合体や目的と逆のコア-シェル構造が形成されるなど,目的の構造体は得られなかった。一方でSnO2@CeO2-xにおいては,昇温速度を細かく調整することにより,球状構造体の外側にSnO2が多く分布した構造の粒子を合成することに成功した。 さらに,五種類以上の金属種が均一に混ざった構造をとる高エントロピー酸化物にも注目した。取り得る結晶構造と価数,触媒への応用可能性の観点から,Cr,Mn,Fe,Co,Niの五元素からなる高エントロピー酸化物の合成を目指し,反応条件を種々検討した。結果として,条件の最適化により球状の構造体を得ることができ,そのTEM/EDX分析から五種類の金属種が構造体の全体にほぼ均一に分布している様子を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,コア-シェル構造体や担持金属触媒,均一複合構造体担持金属触媒など,様々な複合状態をとる構造体の合成に取り組み,本研究が提案する合成手法の完成を目指していた。コア-シェル構造体の合成に関しては,FeOx@CeO2-xやSnO2@CeO2-xを合成ターゲットとして,金属源,溶媒,添加剤,加熱条件などの反応条件が生成物の構造に与える影響を詳しく調べた。結果として,反応条件の最適化により,コア-シェル構造を持つSnO2@CeO2-xをワンポット反応で得ることに成功した。しかし,SnO2@CeO2-x以外の様々な組成のコア-シェル構造体の合成には成功しておらず,合成手法の汎用性を示すには至っていない。その一方で,コア-シェル粒子に対して,五種類以上の金属元素を等モル比で含んだ酸化物固溶体である,高エントロピー酸化物にも注目した。Cr,Mn,Fe,Co,Niの五元素からなる高エントロピー酸化物の合成に取り組んだ結果,目的の高エントロピー酸化物をソルボサーマル法と焼成の二段階プロセスにより得ることができた。コア-シェル構造体の合成に関しては当初の計画と比べて遅れているが,高エントロピー酸化物の合成に成功したことを鑑みると,本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き,様々な複合状態をとる複合金属酸化物構造体の合成に取り組み,本研究が提案する合成手法の完成を目指す。また,試料合成と同時に,得られた種々の複合構造体を触媒または触媒担体に応用し,気相・液相の触媒反応に応用してその性能評価を行う。 複合構造体の合成:合成ターゲットとして,第一遷移金属元素を複数種含んだ複合構造体の合成を試みる。目的の構造を得るため,適宜溶媒の種類を変更,あるいは添加剤を用いるなど条件を検討し,反応条件を最適化する。また,合成法の汎用性を調べるため,様々な金属種の組合せで種々の複合構造体の合成を行う。 触媒 (担体) への応用:まずは,得られた構造体をそのまま触媒として用い,逆水性ガスシフト反応や酸素発生反応などを行う予定である。比較試料として,共同沈殿法や固相反応法などの一般的な手法により金属酸化物複合体を調製し,同様に触媒反応に用いる。それらとの触媒性能の比較を行うことで,試料の複合状態や高次構造,形状が触媒活性や耐久性に与える影響を明らかにすることを目指す。
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