研究課題/領域番号 |
22KJ2643
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
佐藤 優理 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | ガンマ線バースト / 二成分ジェット / TeV ガンマ線 |
研究実績の概要 |
ガンマ線バーストの超高エネルギーガンマ線(TeV ガンマ線)残光放射は、シンクロトロン放射で説明することが難しく、高エネルギー電子が自ら放ったシンクロトロン光子を散乱し、高エネルギーに叩き上げる過程(シンクロトロン自己コンプトン)が有力視されているが、その放射機構は明らかになっていない。観測史上最も即時放射が明るいGRB 221009AのTeV ガンマ線を含む多波長残光を説明するためには、角度の小さいジェットの他に角度の大きいジェットが必要であることを前年度にSato et al. 2023で示した。その後、2023年6月にTeV ガンマ線の観測結果がTeV ガンマ線観測実験LHAASOチームから発表され、我々のTeV ガンマ線残光の放射強度の時間変化の理論予想と観測結果はほぼ一致しており、角度の小さいジェットのローレンツ因子を大きくすることで十分に説明可能であることがわかった。また、ある放射領域に存在する電子が異なる放射領域から出た光子に逆コンプトン散乱を行う過程(外部コンプトン)によるTeV ガンマ線残光放射の計算に着手した。 その他に、GRB 080710の数1000秒後くらいに緩やかな極大を示す可視光残光の起源についても考察し、このイベントのジェットの開き角が小さい・残光の運動エネルギーが大きいなどの点でTeV ガンマ線残光放射を伴うGRBと共通点を持つ可能性があることを指摘し、欧州の学術誌である「Journal of High Energy Astrophysics」に発表した。また、TDEの電波帯域で再増光を示すイベントについても計算し、GRBと同様に、2成分ジェットが必要であるという結果を得た。現在、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GRB 221009AのTeV ガンマ線残光の観測結果についての考察を行い、Sato et al. 2023の二成分ジェットモデルが必要という予言と一致することがわかった。さらに、外部コンプトン過程の計算も順調に進めることができた。 次年度の研究に向け、周辺媒質中を伝播するジェットの2次元軸対称相対論的流体シミュレーションのテスト計算を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、外部コンプトン過程を次世代大気チェレンコフ望遠鏡CTAで検出可能か調べる。 開口角の小さいジェットについては、いつジェットが急激に減速するのか、それに伴い極角方向への膨張速度にどのように影響を及ぼすのか明らかになっていない。そのため、流体シミュレーションを用いて、角度の小さいジェットの運動学的考察を行う。
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