本研究計画は、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインのケメリン活性断片であるケメリン-9及びその他のケメリンC末端断片の急性脳室内投与(intracerebroventricular injection: i.c.v.)による昇圧作用の機序を解明するとともに、高血圧症モデル動物における中枢のケメリンとその受容体chemokine-like receptor 1 (CMKLR1)の役割を解明することで、中枢性血圧制御をターゲットとした新規治療薬開発の基盤とすることを主たる目的とした。 本年度は、以下のことを明らかにした:1)ラットケメリン-9のi.c.v.は平均血圧に影響を及ぼさなかった、2)マウスケメリン-9のi.c.v.は投与2-4分後をピークとして平均血圧を有意に上昇させた、3)マウスケメリン-8及び-7のi.c.v.は平均血圧に影響を及ぼさなかった。以上より、ケメリンはC末端の切断部位により全身血圧に及ぼす影響が異なることが初めて明らかになった。これらの成果を学術集会で発表するとともに、学術論文として公表した(学会誌発表)。また、肥満モデルラットであり、高血圧症を発症するOtsuka Long-Evans Tokushima FattyラットにおいてCMKLR1 small interfering RNAのi.c.v.は全身血圧に影響を及ぼさないこと、対照のLong-Evans Tokushima Otsukaラットと比較して視床下部室傍核におけるCMKLR1 mRNA発現に差がないことを明らかにした。この成果を学術集会で発表した。
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