研究課題/領域番号 |
22J11252
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立音楽大学 |
研究代表者 |
土屋 憲靖 国立音楽大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 対位法 / 音楽理論 / 知識工学 / 列挙問題 / 学習支援 / システム開発 / 零抑制二分決定図 |
研究実績の概要 |
解列挙プログラムについては、最も複雑な種類の課題である華麗種目の解を列挙するために、様々なリズムを含んだ華麗種目の旋律をグラフとして表現しグラフ列挙アルゴリズムで列挙する手法を開発し、その内容を英語で論文にまとめ学術誌に投稿した。この列挙計算では、計算量と計算時間の問題で計算に困難が生じたが、科研費を使って高性能の計算機を導入したこともあり計算に成功した。列挙された旋律の集合に対位法の規則を適用し絞り込むことで、今後、解の全列挙が達成できると見込んでいる。この旋律列挙技術は、様々なリズムを含んだ旋律を列挙できることから汎用性が高く、今後、自動作曲や作曲支援システムへの応用も期待できる。実際に、応用例として簡単な条件を満たす短いカノン(時間をずらして同じ旋律が同時に演奏される楽曲)の列挙に成功した。 学習支援システムについては、操作界面や機能を改善し、より実用的なシステムへと改良することができた。例えば、検索で得られた解を再生し音で確認できるようにしたり、旋律入力画面を全音符以外の音価の入力にも対応したり、入力された答案の誤りを指摘する機能を実現したり、入力に対して自動で正誤判定の表示を更新するようにしたり、楽譜で確認する部分の表示を高速化したりした。また、Reactという仕組みを使いプログラムコードを整理することで今後の開発がより円滑にできるようになったほか、これまではコードの互換性の問題から携帯端末では動作しなかったが、携帯端末でも動作するように改良できた。また、多言語対応の仕組みを導入し、翻訳データを用意すれば多言語表示が実現できるように改良した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時点での計画では、1年目に解列挙プログラムを2年目に学習支援システムを開発することを予定していた。しかし、両方の目的を達成するために並行して開発したほうが良いと考え、予定を変更し、解列挙プログラムと学習支援システムを並行して開発している。解列挙プログラムと学習支援システムの両方について、すでに基礎的な技術開発ができていることから、これを発展させる形で開発を進めることで、研究が完成できると見込んでいる。 解列挙プログラムについては、すでにパレストリーナ様式の対位法における基礎的な課題について開発が済んでいるほか、難しい課題に対応するための技術開発も済んでいる。そのため、今後、この技術を発展させ対位法の規則に照らし合わせることで各課題の解列挙が実現できると見込まれる。また、研究者はパレストリーナ様式の対位法をすでに習得していることから、対位法知識の面で今後問題が出る心配も無い。 学習支援システムについても、ウェブアプリケーションとしてインターネットを介してウェブブラウザで外部からアクセスすることで実際に動作することを確認しており、順調に開発が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
解列挙プログラムについては、今年度達成した旋律列挙プログラムを用いて解の列挙を行い、2声の課題に関するすべての解列挙を達成する予定である。また、3声以上の課題に対する解の列挙手法を考案し、実現する予定である。3声以上の課題に対する解の列挙手法については、複数声部の組み合わせを列挙する必要があるため、データ表現手法を工夫する必要がある。このことについてはすでに解決方法を思い付いており、今後の開発において解決できると見込んでいる。また、旋律数が増えることで組み合わせが更に多くなることから計算量についても懸念がある。しかし、より効率的に計算するための改良方法をすでに思い付いているため、その方法を試す予定である。 学習支援システムについては、引き続き機能の改善や新機能を開発し、対応課題を増やしていくとともに、意見収集調査を再度行うことで、効用や可用性および改善点を見つけ、各機能を改良することでよりより実用的な支援システムの実現を目指す。
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