研究課題/領域番号 |
21J20061
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
本多 栞 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / 治療抵抗性 / 音楽機能 / 失音楽症 |
研究実績の概要 |
コロナウイルスの影響で実験の一部が中止になったものの、健常者・統合失調症患者(治療反応群・治療抵抗性群)の両群に対して実験を実施した。実験では、神経基盤の検討をするために、3TMR装置で脳構造画像(T1強調画像)・脳代謝物質(MRS法)・脳波計測装置を用いて安静時の神経活動の計測を行なった。音楽機能の評価は先行研究を元にリズム能力・ピッチ能力・音楽報酬機能を計測した。また、患者の症状重症度は、陽性・陰性症状評価尺度を用いて評価した。検査実施時には、感染対策のために消毒と検温を実施した。本年度は、計測したデータの一部を用いて解析パイプラインを作成した。構造解析の解析には、微小な構造変化も含めた包括的な解析を実施するパイプラインを作成した。また、脳代謝物質の解析パイプラインも作成した。統合失調症の脳構造と音楽機能の関係性に関する中間解析の結果、統合失調症と健常者では類似の脳領域が情報処理に関与するが、病態によって体積減少が生じ、音楽情報処理のプロセスの一部が阻害されている可能性を示唆する結果を発見した。この結果は2021年6月に開催されたThe Neuroscience and Musicで発表を行った。また、同学会で本発表テーマに対してスカラシップを受賞した。加えて、コロナウイルスの影響で実験実施回数が減少したため、過去に実施した研究も併せて追加解析も行い、今回の研究の仮説の検討の参考とした。解析の結果、先行研究と同様、音楽機能が健常者と比較し、統合失調症患者で低いことを再現した。加えて、統合失調症患者の投薬治療の治療反応の差異によって音楽能力に異なる特徴を持つことも明らかにした。本結果は現在、論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルスの影響で実験の一部が中止になったものの、検査実施時に、感染対策のために消毒と検温を実施することで、健常者・統合失調症患者(治療反応群・治療抵抗性群)の両群に対して実験を行うことができた。また、実験が中止になった際には、解析パイプラインの作成を前倒しして行うことができたため、パイプラインの作成も問題なく完了した。中間解析の結果の一部はオンライン国際学会で発表し、海外研究者と意見交換を行うことができた。また、同学会にて中間解析の結果を発表したテーマに対して、スカラシップを受賞した。コロナウイルスの影響で実験実施回数が減少したため、過去に実施した研究も併せて追加解析も行い、今回の研究の仮説の検討の参考とし、論文を執筆した。上述の進捗状況を踏まえ、概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度も、コロナウイルスの感染対策に最新の注意を払いつつ、実験を実施していく予定である。2022年度は特に事前の体調確認を強化することで、事前から体調不良がわかっている場合には他の研究参加者を募り、実験を円滑に進めることができるように努める。解析パイプラインはさらに精度を上げるために、海外の専門的な研究者とディスカッションをする機会を複数回設定する予定である。新しい解析手法も積極的に取り入れるべく、学会参加などを通じて情報収集を幅広く行っていく予定である。結果はデータが集積し次第、逐一追加解析を行い、積極的に学会発表を行いたいと考えている。また、現在投稿中の論文に関しては、リバイズを丁寧に行っていく予定である。
|