研究課題/領域番号 |
21J20061
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
特別研究員 |
本多 栞 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 治療抵抗性 / 音楽機能 / 脳代謝物質 |
研究実績の概要 |
本研究は、TRSの音楽機能に着目し、TRSの病態と失音楽症の神経基盤の関連性の解明を目的として研究を進めた。本研究課題では、まず初めに統合失調症における音楽機能の評価を行い、統合失調症における特異的な低下及び治療反応性との関連を特定した。これらの成果は2023年にアクセプトされ、Schizophrenia Research誌に投稿された(Honda et al., Schizophrenia Research, 2023)。次に行った、脳代謝物質と音楽機能の関連性の解析では、健常者における尾状核のグルタミン酸機能と音楽機能との関連性を発見した。これは世界で初めての検討であり、Frontiers in Neuroscience誌に報告した(Honda et al., Frontiers in Neuroscience, 2023)。以上の解析により、本研究課題での中心である、治療抵抗性統合失調症患者の音楽機能の特徴の描出、および脳内の神経情報伝達物質の関連について検討することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前年度から続けている健常者及び統合失調症患者(治療反応群・治療抵抗性群)への実験を実施した。これらの実験では、3T Siemens社製のMRIを使用して脳の構造画像(T1強調画像)、安静時の脳機能画像、及び脳代謝物質の測定(MRS法)を中心に行い、神経基盤の解明を目指した。音楽機能の評価にはリズム能力、ピッチ能力、音楽報酬機能を計測し、先行研究に基づいた。患者の症状重症度はPANSSを使用して評価した。検査実施時は、感染症対策として消毒と検温を徹底した。本年度は、収集したデータに基づき解析パイプラインを構築し、前年の中間解析の結果を踏まえた本解析を実施した。本研究課題で初めに取り組んだ音楽指標のデータ解析では、音楽機能の低下及び治療反応性との関連を特定した。これらの成果はSchizophrenia Research誌に投稿された(Honda et al., Schizophrenia Research, 2023)。次に行った、脳代謝物質と音楽機能の関連性の解析では、健常者における尾状核のグルタミン酸機能と音楽機能との関連性を発見した。これは世界で初めての検討であり、2023年8月に行われた慶應義塾大学医学部性神経科学教室内で行われた大学院生研究発表会にて優秀演題賞を受賞した。この結果はFrontiers in Neuroscience誌に報告した(Honda et al., Frontiers in Neuroscience, 2023)。さらに本年度は安静時脳機能画像の解析にも解析の幅を広げた。音楽機能におけるリズム処理能力に重要なネットワーク、特に小脳中心のネットワーク、聴覚皮質-運動野、及び補足運動野-背側線条体の機能的結合性の解析に注力した。健常者と統合失調症患者との比較を行った結果、患者では結合性が低下しており、それがリズム処理能力と相関していることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、今後さらにこれまでの解析結果を用いて、マルチモーダルな研究に発展させていける可能性がある。代謝物質レベルの変化と領域間の機能的活動性の変化がどのように関連しているかということを追求していくことで、治療抵抗性統合失調症における音楽機能低下に関連する神経基盤の詳細を検討することができる。
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