研究実績の概要 |
本研究は、TRSの音楽機能に着目し、TRSの病態と失音楽症の神経基盤の関連性の解明を目的として研究を進めた。本研究課題では、まず初めに統合失調症における音楽機能の評価を行い、統合失調症における特異的な低下及び治療反応性との関連を特定した。これらの成果は2023年にアクセプトされ、Schizophrenia Research誌に投稿された(Honda et al., Schizophrenia Research, 2023)。次に行った、脳代謝物質と音楽機能の関連性の解析では、健常者における尾状核のグルタミン酸機能と音楽機能との関連性を発見した。これは世界で初めての検討であり、Frontiers in Neuroscience誌に報告した(Honda et al., Frontiers in Neuroscience, 2023)。以上の解析により、本研究課題での中心である、治療抵抗性統合失調症患者の音楽機能の特徴の描出、および脳内の神経情報伝達物質の関連について検討することができた。らに本年度は安静時脳機能画像の解析にも解析の幅を広げた。音楽機能におけるリズム処理能力に重要なネットワーク、特に小脳中心のネットワーク、聴覚皮質-運動野、及び補足運動野-背側線条体の機能的結合性の解析に注力した。健常者と統合失調症患者との比較を行った結果、患者では結合性が低下しており、それがリズム処理能力と相関している可能性を示した。
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