研究課題/領域番号 |
21J21244
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
SUPAKUL SOPAK 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / iPS細胞 / 神経細胞 / アストロサイト / 共培養系 / 脳オルガノイド / 性差 / 性ホルモン |
研究実績の概要 |
本研究は、新規iPS細胞株の樹立、様々なアルツハイマー病(AD)患者由来 in vitro 細胞モデルの確立(単培養系(神経細胞のみ)・共培養系(神経細胞とアストロサイト)・3次元培養系脳オルガノイド)、及び性ホルモン効果の検証を行っている。2022年度は新規樹立した細胞株の中、複数のSNPが認められた症例からiPS株(KEIOi005-A iPSC line)を解析し、論文として発表している(Supakul et al. Stem Cell Research. 2022)。AD様 in vitro モデルの確立に関して、新規誘導法を用いた神経細胞の単培養では、AD患者由来モデルが健常者由来モデルと比べ、分泌アミロイドβ(Aβ)の上昇が認められた。また、神経細胞とアストロサイトの共培養系も開発しており、共培養系は神経細胞では細胞活動・突起の複雑さが上昇し、電子顕微鏡による観察では、シナプス前部におけるシナプス小胞数が増加した。アストロサイトでは、プロセスの複雑さ・GFAP陽性細胞の割合が増加し、共培養系では、単一培養系より各種細胞における成熟な細胞の特徴を得られた。さらに、家族性アルツハイマー病患者由来iPS細胞(APP V717L株)の共培養系では、健常者由来iPS細胞(201B7株)の共培養系と比べ、AD病態のアストログリオーシス様表現型及びアストロサイトの肥大化を観察できた。性ホルモン効果の評価に関して、17β-エストラジオール(E2)投与の急性効果(15分後)として、Ca2+イメージングにおける、神経活動性の上昇を認めた。E2の慢性効果(4日後)としても神経突起伸長及び分岐促進を認めた。さらに、上記の共培養系においては、アストログリオーシスを緩和する効果も認められた。今後は、作製した家族性及び孤発性AD患者由来脳オルガノイドモデルのAD表現型様の解析・性ホルモン投与後の効果の検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者検体からiPS細胞の樹立が進んでおり、疾患の表現型が確認できた様々なIn vitro培養系(単培養系、共培養系、脳オルガノイド)の開発が成功している。また性差の効果として着目した性ホルモン(17β-エストラジオール)の効果もin vitro培養系で確認することに成功している。今後は開発に成功したIn vitro培養系を用いて、アルツハイマー病(AD)の表現型の確認、新規樹立したAD患者のiPS細胞を用いた患者の層別化を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
確立されたAD表現型及びE2投与後の反応を用いて、樹立された様々なAD患者由来iPS細胞株から作製した2D及び3D培養系を用いて、細胞自律的・非自律的効果によるAD層別化を進める予定である。
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