研究課題/領域番号 |
21J21546
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
杉山 靖和 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | アミド / ラクタム / イリジウム / アゾメチンイリド / 全合成 / アルカロイド / 1,3-双極子 / アスピドスペルマ |
研究実績の概要 |
本研究は、「複雑な分子構造を有するアルカロイドの迅速な全合成」という有機合成化学および創薬化学の上で重要な課題のもと、「超短工程化アミド戦略」という方法論の開発に取り組む。具体的には、1) 「超短工程化アミド戦略」に基づいた「アミド[3+2]環化付加法」の確立、2)アスピドスペルマ型モノテルペンインドールアルカロイドの全合成の二つの課題に取り組んだ。 課題1:「アミド[3+2]環化付加法」の確立 アゾメチンイリドは1,3-双極子のひとつであり、有機合成上で重要な官能基である。これまでに様々なアゾメチンイリドの合成法が開発されているものの、多環性アルカロイド合成において重要な「環状アゾメチンイリド」の合成法は確立されていなかった。本課題では、ラクタムより環状アゾメチンイリドを合成する手法の開発に取り組んだ。ラクタムをイリジウム触媒とシラン還元剤で処理すると、ラクタムカルボニルのヒドロシリル化を経て環状エナミンが得られた。ここに、求電子剤および酸とアルコールを加えると環状アゾメチンイリドを発生させることができた。発生した環状アゾメチンイリドは、即座にオレフィンとの[3+2]環化付加反応を起こし、多置換ピロリジン環が構築できた。以上により、ラクタムを環状アゾメチンイリドへと変換することに成功し、「アミド[3+2]環化付加法」を確立できた。 課題2:アスピドスペルマ型モノテルペンインドールアルカロイドの全合成 アスピドスペルマ類は、モノテルペンインドールアルカロイドを構成する最大のグループのひとつであり、抗がん活性などの有用な生物活性を有している。本課題では、確立した「アミド[3+2]環化付加法」を用いてアスピドスペルマ類のひとつであるMehranineの全合成に取り組んだ。本全合成において「アミド[3+2]環化付加法」は有用であり、13工程にてMehranineの全合成を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、アスピドスペルマ型インドールアルカロイドの全合成に向け、「アミド[3+2]環化付加法」を確立し、確立した方法論を用いてアスピドスペルマ型インドールアルカロイドの共通中間体である三環性ケトンの不斉合成を行う計画であった。 アミド基よりアゾメチンイリドを発生させる方法は、イリジウム触媒を用いることにより実現することができ、「アミド[3+2]環化付加法」を確立できたといえる。また、確立した手法を用いることで、アスピドスペルマ型インドールアルカロイドの共通中間体である三環性ケトンの不斉合成を達成することができた。 以上に挙げた結果より、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに、アスピドスペルマ型インドールアルカロイドの共通中間体である三環性ケトンの不斉合成を達成した。今後は、共通中間体の量的供給を達成し、アスピドスペルマ型インドールアルカロイドの単量体の網羅的全合成に取り組む。また、全合成した単量体を用い、アスピドスペルマ型インドールアルカロイドの二量体天然物の全合成に取り組む。
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