研究課題
本研究は、「複雑な分子構造を有する多環性アルカロイドを短工程にて全合成する」という、有機合成化学において重要な課題に対し、考案した「超短工程化アミド戦略」を用いて取り組んだものである。考案した超短工程化アミド戦略は、1.入手容易なアミドを全合成の出発原料とする点、および、2.アミドが有するカルボニル基の反応性を利用して炭素骨格を構築した多置換アミドを合成する点、3.多置換アミドのカルボニル基に対する還元的エナミン合成/(3+2)環化付加反応にて一挙に多置換アミンを合成する点、という3 つの要素から成り立っている。本年度は、次の2つの課題に取り組んだ。◆課題1:還元的エナミン合成/(3+2)環化付加反応の基質一般性の調査と生成物の誘導化:前年度までにエブルナモニンの全合成にて開発した、ラクタムに対する還元的エナミン合成/(3+2)環化付加反応の基質一般性の評価をした。その結果、本反応は様々な官能基と共存可能であり、15 種類の基質について中程度の収率で反応が進行した。得られた生成物に対する酸を用いた求核付加反応で、多置換環状アミンを一挙に合成可能であった。◆課題2:還元的アゾメチンイリド合成/[3+2]環化付加反応を用いたアスピドスペルマ型アルカロイドの網羅的全合成:前年度までにアスピドスペルマ型アルカロイドの網羅合成の共通中間体を8 工程にて不斉合成した。得られた共通中間体より、種々の置換基を有するアリールヒドラジンとのFischer インドール化反応を含む数工程にて、6 種類のアスピドスペルマ型アルカロイド単量体天然物の全合成に成功した。また、合成した構造が異なる単量体天然物同士を二量化させ、2種類のアスピドスペルマ型アルカロイド二量体天然物の初の全合成に成功した。また、全合成を達成した二量体天然物とは異なる、もう一種類の二量体天然物に関しても二量化反応に成功している。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 63 ページ: e202317290
10.1002/anie.202317290