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2023 年度 実施状況報告書

腸内細菌由来のD-アミノ酸が宿主動物の消化管機能に及ぼす影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ2682
配分区分基金
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

谷口 紗貴子  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-06-29 – 2025-03-31
キーワード腸内細菌 / D-アミノ酸
研究実績の概要

今年度は腸内細菌由来D-アミノ酸が宿主動物個体レベルにどのような影響を与え得るのか、探索を行った。
前年度、in vitroの実験系において、消化管内の共生細菌由来D-アミノ酸が腸内分泌細胞を刺激し、消化管ペプチドの分泌を促すことを示唆する結果を得た。消化管ペプチドは栄養素の効率的な吸収のため腸内容物輸送時間を遅らせる働きがあるため、消化管管腔内のD-アミノ酸濃度の違いによって腸の運動性が変化することが予想された。よって、消化管上皮においてのみD-アミノ酸濃度が高値を示すD-アミノ酸代謝異常マウスの消化管の運動性を評価したところ、消化管の内容物輸送時間が対照系統と比較して延長することが明らかとなった。
続いて消化管運動性を制御するD-アミノ酸の探索を行った。D-prolineは初年度の実験の結果、腸内分泌細胞に対する刺激性が強いことが分かっている。加えて便中濃度が高い他、D-アミノ酸代謝異常マウスの血漿中濃度は野生型と比べて10倍以上高い。このことに着目して、D-prolineを長期投与した野生型マウスの消化管の運動性の評価を行ったが、対照群と比較して有意な差はなく、D-アミノ酸代謝異常マウスにおける内容物輸送時間の遅延はD-prolineの作用ではないと考えられた。
最後にD-アミノ酸による消化管運動性の調節メカニズムの解明を試みた。まず、循環消化管ペプチドが中枢に作用した可能性を検討した。D-アミノ酸代謝異常マウスの血漿中消化管ペプチドは対照系統と同程度だったため、消化管ペプチドが消化管運動性を調節していた場合、その作用は局所的なものと考えられた。次に腸内細菌叢が消化管の運動性に及ぼす影響を検討した。D-アミノ酸代謝異常マウスの腸内細菌叢解析や腸内細菌叢移植の結果、D-アミノ酸代謝異常に伴う腸内細菌叢の変化が宿主の消化管運動性調節に影響を与えていることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は出産に伴う4か月間の採用中断期間があったにも関わらず、ほぼ研究計画通りの進捗があったため「おおむね順調」に進んでいると判断した。特に、D-アミノ酸代謝異常マウスでは消化管の運動性が変化するという、個体レベルでの変化を発見することができたことにより研究が大きく進展したと考えている。この表現型を活用して実験系を組むことで腸内細菌由来D-アミノ酸による宿主の消化管機能調節のメカニズムの解明が飛躍的に進むと期待される。

今後の研究の推進方策

最終年度である次年度はD-アミノ酸代謝異常マウスにおける消化管の運動性の変化のメカニズムの解明をさらに進めていく。また、D-アミノ酸の代謝異常が消化管の運動性を変化させることの意義、つまりが哺乳類にとってどのような利点があるのかということの解明を目指す。この目的達成の手始めとして、腸炎モデルマウスにおけるD-アミノ酸の効果を調べ、D-アミノ酸による消化管運動性制御と疾患との関わりを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

学内共同利用施設の都合により年度末に次世代シーケンサーを使用することができず、予定していた腸内細菌叢解析の実施が次年度に延期となったため。未使用金は延期となった腸内細菌叢解析を行うために使用する。

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公開日: 2024-12-25  

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