本研究では、話し手の発言をもとに作られた聞き手の発言を対象に解釈を提示する方法を分析、聞き手の解釈及び解釈提示の実態について論じる。2023年度は複数の事例分析を中心に研究を行った。 1. 討論における戦略的な言い換えシークエンスの分析:大学生による欧州英語討論大会をデータ源とし、相手陣営の主張を引用し自分が論破しやすい形に言い換え反論するまでのシークエンスを、会話の意味分析の手法で分析した。つまり、反論のための新出語句が既出の発言をどう意味づけるかを調査した。結果、討論では、相手の主張内容から因果関係や出来事の前後関係で導かれる内容を示す反論が多く見られた。その他、相手の主張に合わない反例を示すため、相手の発言を掘り下げる具体化も時折使用されていた。従って、相手の主張の言い換え手段として、因果関係や前後関係が特に効果的かつ戦略的に用いられており、その背景には、これらの関係は元の発話内容から多面的かつ自由な意味内容に発展させやすいことが関係すると伺える。 2. 会話での欺瞞的な「言い換えない言い換え」の質的分析:聞き手が話し手の発言の意味を誤解したままほぼ言い換えず確認する現象について、対話者同士の発話の意味への推論を漸進的に追うモデルを使用し、互いが該当の発話をどう解釈しているのかを発話時点ごとに追って分析した。結果、対象の現象では、誤解の発見が最低一ターン以上遅くなり、かつ元の話し手が形式上同意するため誤解の解消が一層困難になっていた。この「言い換えない言い換え」の欺瞞性を示すことができ、発話の意味(の理解)の相違と言い換え度合いとの関連性も示唆された。 3. 複数の解釈をめぐるSNSでの議論:上記分析で判明した複数の解釈とその提示という複雑な現象をさらに調査すべく、SNSでの炎上・誤解を対象に、特定の投稿を不特定多数の聴衆がどう解釈し表明するかについて予備調査を行なった。
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