本研究ではAPOE遺伝子のE4型およびE3 Christchurch型の解析を実施した。またヒトiPS細胞由来のニューロンとアストロサイトの共培養系を新規に開発した。 iPS細胞由来ニューロンとアストロサイトの新規共培養系ではニューロンのシナプス数を増大させること、アストロサイトの複雑性を向上させること、プレシナプス・ポストシナプス・アストロサイトによる三者間シナプスを形成させることに成功した。 APOE E4の解析ではゲノム編集によってisogenic APOE E4 iPS細胞を作製し、APOE遺伝子の主な発現細胞であるアストロサイトに分化誘導した。APOE E4アストロサイトはマウス初代神経細胞と共培養することでAPOE E3アストロサイトでは観察されない初代神経細胞のスパインの減少を発見した。 APOE E3 Christchurchではゲノム編集によってisogenic APOE E3 Christchurch iPS細胞を作製し、アストロサイトへ誘導した。APOE E3 ChristchurchはPSEN1遺伝子変異を持つニューロンにおいてタウタンパク質の伝播を抑制することでアルツハイマー病の進行を抑制する可能性が既報により示唆されたため、本研究ではPSEN1遺伝子変異を持つニューロンを用いたタウタンパク質の伝播系を確立した。その後、APOE E3 ChristchurchアストロサイトをPSEN1遺伝子変異を持つニューロンと共培養し、タウの伝播に対するAPOE E3 Christchurchアストロサイトの効果を検証した結果、APOE E3 Christchurchアストロサイトはタウの伝播を抑制することを発見した。
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