本研究は、インシュレータータンパク質が持つ二重の機能性、すなわちゲノム高次構造と、エンハンサー阻害機能の二つの役割を通して遺伝子の発現調節を分子レベルで解明することを目的としている。昨年度は本研究成果の一部をNucleic Acid Research誌に発表し、研究成果を発表することができた。そこで今年度は、本研究課題のさらなる発展のためUniversity of Texas Southwestern Medical Center Green Center for reproductive biology sciencesのGary Hon研究室に留学し、本研究課題研究を遂行した。本研究室では、先端的なハイスループット実験系の立ち上げを目的として、予備データ の収集を主に行った。 具体的には、ヒトのK562細胞を用いて目的のゲノム断片を導入し、その機能評価を可能にする実験系の構築を目指した。いくつかの予備データは正しい場所へのDNA断片への挿入を示唆し、この成果はインシュレーターおよびエンハンサーの機能を大規模に評価するための基盤を提供する。今後の研究計画では、構築したハイスループット実験系を用いて、インシュレータータンパク質の機能的特性を詳細に分析する予定である。 また、今年度は、東京大学の塩見美喜子教授との共同研究として、昨年度に得られたMicro-C XLのデータを基に、OSC細胞のHaplotype毎の高品質なゲノムデータを作成することができた。OSCはトランスポゾン研究のモデルとして広く使われているが、これまで高精度なゲノムデータが存在しないことが課題としてあった。本研究課題の一部として作成したこのゲノムデータは、トランスポゾンがどの様に挿入されるかという点について、OSC細胞の利用を大幅に拡張することが期待される。
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