研究実績の概要 |
(1)アリール基を有するアルケンの遠隔ジボリル化 アリール基が導入されたアルケンを用いることで、環化過程を必要としない遠隔ジボリル化がわずかながら進行することを見出していたため、まず収率向上を目指して反応条件の検討を行なった。その結果、配位子、溶媒量および反応温度の調整により収率を70%超まで向上させることに成功した。続けて基質上の置換基の効果を調べたところ、置換基により収率に顕著な差がでることが分かった。置換基の効果により、本反応の鍵過程であるσ結合メタセシスに影響が出たと考えられる。
(2)1,n-ジエンの遠隔ヒドロホウ素化・環化反応 アルケン部位のボリルパラジウム化につづく遠隔官能基化として、1,n-ジエンとヒドロボランの反応を検討した。条件検討の結果、1,n-ジエン(n=7-9)から五員環部位を有するアルキルボランを得ることができた。形成されるC-B結合と分子内C-C結合が離れた位置に構築されており、従来なかった形式である遠隔ヒドロホウ素化・環化反応を達成した。さらに反応条件を変更することで、1,6-ジエン類のヒドロホウ素化・環化反応が高収率で進行することも見出し、1,6-ジエンとヒドロボランの反応によりボリルメチル基を有する五員環生成物を得ることに初めて成功した。本反応の有用性を示すための応用展開も行った。いくつかの生物活性物質の骨格として知られている3,4-ジアルキルピロリジンを、容易に入手可能なジアリルアミン類から一工程で構築できるだけでなく、導入されたホウ素官能基を用いたさらなる変換も可能であることを実証した。本研究成果は、The Journal of Organic Chemistry誌に掲載された。
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