研究課題
本研究は、弥生時代併行期における鉄器流通と社会変化の関係を鉄器加工技術の視点から言及したものである。近畿以東における鉄器加工技術が、九州島や中四国といったより西の地域に比べ稚拙であることは、先学にて指摘され続けてきたことだが、本研究で主たる分析対象とした関東および中部高地は、そのなかでも技術水準の低さが目立ち、製作できる鉄器は鏃やヤリガンナといった小型のものにとどまることが判明した。一方、関東、中部高地に、当該地の技術水準では製作しがたい厚手の長剣や厚手の板状鉄斧が多数存在することも事実である。加工技術の視点から朝鮮半島製と推察されるそれらの資料数が、朝鮮半島と地理的に近い西日本諸地域をはるかに上回る時期も存在する。さらに後期後半に限定されるものの、北部九州や山陰ではなく、近畿北部や関東、中部高地に朝鮮半島出土例と同一型式の鉄剣が集中することも明らかとなった。そして、出土例が関東、中部高地に限定される螺旋状鉄釧は、当該地はおろか、弥生時代併行期における日本列島の鉄器加工技術では製作困難なことも見いだした。以上の分析成果は、地理的距離が離れた関東、中部高地の集団ですら、朝鮮半島の集団と人的直接交流を行っていた可能性を示すものであり、日本海を越えた交流の新たな姿を考察する契機となろう。ただし、上述のような長距離交易によって、関東、中部高地にもたらされた鉄器は、所有者の階層的上位性を示すアイテムとして用いられなかった。鉄器普及がもたらす流通網の広域化が階層化を進展させるという図式は、普遍的なものと言い難いのである。この地域差を考えるうえで、地域ごとで醸成されてきた社会システムの差異の検討は欠かせないだろう。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
「高地性集落」論のいま-半世紀ぶりの研究プロジェクトの成果と課題-
巻: なし ページ: 63-68
駒澤考古
巻: 49 ページ: 刊行前
国立歴史民俗博物館研究報告
巻: 不明 ページ: 刊行前
交野の王墓と鉄器生産
巻: なし ページ: 84-88
古代武器研究
巻: 18 ページ: 21-36
Report on the results of the academic research service on the aggregation of iron-related data in Gaya in Japan
巻: なし ページ: 1297-1298