研究課題/領域番号 |
21J40111
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
森 いづみ 上智大学, 総合人間科学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2021-10-01 – 2025-03-31
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キーワード | 社会階層 / 学習意欲 / 国際学力調査データ / パネル調査データ / 私立学校 / 日本的特徴 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究課題に対して以下の三つの側面から研究を進めた。 1)中学生の学校外の学習時間に注目し、その背景および効果について分析した。まず国際学力調査データTIMSSを用いて、学習時間と社会階層との相関が日本を含む各国でどう異なるかを検討した結果、日本は家庭背景に関わらず中学生が宿題に時間を費やす一方、通塾と社会階層との相関は国際的に見ても高いことが分かった。次に東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所の共同研究である「子どもの生活と学びに関する親子調査」を用い、日本では政令市・23区で通塾をしていないと塾以外の学習時間(宿題+自習)も短くなる傾向を明らかにし、地域差への注目の必要性を見出した。さらに因果効果に関して、成績に対して有意な影響をもつのは勉強時間と通塾時間である一方、宿題時間はそうでない傾向を示した。ただし、宿題時間は授業の楽しさや教科への好感度に対しては有意な影響をもつ傾向も見られた。 2)公立と私立学校の違いに注目し、日本の中学段階で私立中学に進学することが生徒の学校や学業に対する意識に対してもつ効果に関する分析を行った。私立中学への進学は学習意欲に対して有意な効果をもたない一方、学校への好感度を中1時点で上昇させるが、その効果は中3にかけて低減する傾向を見出した。性別や成績など、生徒集団の特徴によって効果のあり方が異なる可能性も示した。 3)教育と社会階層に関して、共同研究者と先行研究のレビューを行って論文を執筆し、日本の教育の特徴に関して、別の共同研究者とともに意見交換を行いながら論文を執筆・投稿した。これらの研究課題への理解を深めるため、米国のComparative and International Education Societyの学会にオンライン参加し情報収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は学習意欲や学習行動の背景について、社会階層や学校レベルの特徴(公立と私立)を考慮した分析を進め、日本国内におけるメカニズムの詳細だけでなく、日本の国際的な位置づけに関する考察を深めることができたためである。 ただし、当初予期しなかった状況として、当概年度の8月に私立中学への進学の効果をテーマとした自身の研究紹介のコラムをウェブ上で発表したところ、秋以後に新聞社等メディアからの取材依頼への対応の必要性が生じたことが挙げられる。これにより一般へのアウトリーチ活動ができた反面、国際学力調査データの強みを生かした分析時間が十分に取れなかったことが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は国際学力調査データを用いた分析を精力的に行い、これまで行ってきた研究成果を一冊の単著の原稿にまとめる予定である。具体的には秋の科研費の研究成果促進費(学術図書)への申請を目標に作業を進める。また5月に台湾の教育社会学会大会、6月にオーストラリアの国際社会学会大会でそれぞれ報告を行い、自身の研究に対する国際的なフィードバックを受ける予定である。
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