研究課題/領域番号 |
21J00434
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
山田 美季 成城大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 邪鬼 / 『七大寺日記』『七大寺巡私記』 |
研究実績の概要 |
邪鬼の歴史において空白地帯である平安時代後期の実態を探るため、まずは研究の基盤となる基礎資料の収集に努め、通史の編年を行なった。制作年代が明らかな基準作例および、同時代の作と措定される重要作例を取り上げて表にまとめ、参考資料と写真資料との紐付けを進めた。通史の編年を通して得られた邪鬼の造形的知見については、その知見の一部を『国華』1525号に論文としてまとめた。 また従来、鬼神像全般に関する記事が認められることが指摘される『七大寺日記』および『七大寺巡礼私記』について改めて検討した。邪鬼に関する記事に特化して整理し、とくに造形的な価値が論じられた邪鬼について、史料や現存作例を手掛かりに様式検討を進めた。史料的観点から平安時代後期における邪鬼の造形的な特徴について考察を加え、この時期に評価された邪鬼の造形について理解を深めた。定朝の作例が評価されていないこと、また現代では古代の代表的な作例とされる法隆寺金堂四天王像邪鬼や、西大寺四王堂四天王像邪鬼についても注目されていないことが明らかとなった。ここで得られた知見は駒澤大学『文化』第40号に論文としてまとめた。 このほか、採用準備期間から研究を進めてきた和歌山・慈尊院四天王像邪鬼について美術史学会例会にて口頭発表を行なった。本像自体は鎌倉時代の作例だが、今回平安時代後期の作例に関する知見を深めたことで、従来の成果報告に加えて、次年度の本研究課題へとつながる新たな考察の手がかりを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎資料の収集については、基準作例および重要作例についてエクセル表にまとめ、参考文献と写真図版をドライブに格納し、リンク先を添付することで表と紐付けした。まずは四天王像、二天王像足元の邪鬼を中心に作業を進めているが、続けて毘沙門天像の足元の邪鬼についても整理を進めたい。なお上記の作業と美術史学会での口頭発表を通して、福島・願成寺白水阿弥陀堂の二天像邪鬼に着眼するに至った。本作については、次年度以降の研究対象として位置付ける。また本年度は『七大寺日記』および『七大寺巡礼私記』を精査することで、美術史学的アプローチとは異なる史料学的なアプローチから平安時代後期の邪鬼の造形理解に努めた。次年度は、これらを足掛かりとして、文学史料などに掲載される鬼神について検討を行い、当該時期に制作された邪鬼の造形との比較検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、基礎資料の充実をはかり、そこから得た知見をもとに具体的な作例を取り上げて、調査にもとづく個別研究を進める。具体的には福島・願成寺白水阿弥陀堂の二天像邪鬼を検討している。文献や史料からのアプローチについても引き続き考察を深めるとともに、絵画資料にも視野を広げて、この時代の鬼神観、邪鬼の造形について研究する。
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