パーキンソン病で変性を起こす神経細胞には選択性があり,特にドパミンニューロンの変性が顕著である.近年の報告から,ドパミンニューロンの恒常性維持にはオートファジーが重要であることが示唆されている.小胞体などを隔離膜の起源とする古典的オートファジーに対し,ゴルジ体が隔離膜の起源となるRab9依存性新規オートファジーも近年明らかとなり,神経変性疾患における新規オートファジーの役割の解明も急がれている.本研究で対象としているVPS35遺伝子は,その変異が家族性パーキンソン病(PARK17)の原因となっているほか,孤発性パーキンソン病においても脳内の発現低下が確認されている遺伝子であり,パーキンソン病病態解明における重要な遺伝子と考えられている.申請者は,パーキンソン病患者由来VPS35遺伝子変異iPS細胞から分化させたドパミンニューロンの解析を行い,パーキンソン病の病態解明を目指している.これまでの申請者の研究により,VPS35遺伝子変異は,Rab9小胞の細胞内輸送障害を引き起こすこと,Rab9依存性の新規オートファジーを抑制することなどが示された.本結果は,パーキンソン病において新規オートファジーが重要な役割を果たしている可能性を初めて示したものである.今後の研究でも引き続き新規オートファジーに着目した病態解析を継続し,パーキンソン病におけるドパミンニューロンの神経細胞死のメカニズムについてより詳細な解明を目指している.
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