研究実績の概要 |
本研究課題は、「もしAならばBだっただろう」という反実仮想条件文が、「Aの場合にBがどの程度生じそうか」という出来事の生起確率の判断と、反実仮想に基づく因果判断にどのような影響を与えるかを明らかにし、またその文化差を検討することを目的としている。 2023年度は、反実仮想条件文「もしAならばBだっただろう」が真である確率の判断と、「Aが生じたためBが生じたか」といった反実仮想に基づく因果推論や、「AはBに責任がある」といった責任帰属との関連を検討した。先行研究において、反実仮想条件文や反実仮想に基づく因果推論や責任帰属について、 Aの場合に B が生じる条件付き確率 P(B|A) と等しいとする立場と (Over et al., 2007)、Aが生じる確率とAの場合にBが生じる条件付き確率の同時確率 P(A) * P(B|A) とする立場 (Petrocelli et al., 2011) がある。本研究課題において、日本人参加者を対象に、反実仮想条件文と反実仮想に基づく因果推論、責任帰属の関係を検討したところ、反実仮想条件文が真である確率は条件付き確率をもとに判断する傾向が示された。一方、因果推論や責任帰属ではAとBの同時確率をもとに判断が行われやすいことが示された。これらの結果は、反実仮想が真である確率と、反実仮想に基づく因果推論や責任帰属では異なる判断基準が用いられている可能性を示すとともに、反実仮想推論における文化差の可能性を示唆している。
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