今年度は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の新規遺伝子治療開発を目指したDDS研究を展開するべく、以下の項目について検討した。 1)全身投与が可能なmRNA内包脂質ナノ粒子(LNP)の開発:DMDは全身性の病態である。そのため全身投与により筋組織へ送達させることが可能なLNPとする必要がある。そこで、筋組織に対して効率的な送達を達成するため、初めに肝臓や脾臓等の他の臓器での遺伝子発現が減少するLNPの設計を行い、DMDモデルマウス(mdx)の各臓器での遺伝子発現を、レポーターmRNAを用いて評価した。その結果、LNPに利用するPEG脂質構造の炭素鎖の長さを変えることで肝臓や脾臓への集積が減少することを明らかとした。更に、PEG脂質の脂質構造の違いにより筋組織での遺伝子発現も変化し、筋組織で遺伝子発現が増加するLNPの脂質組成を決定した。 2)筋選択的mRNA内包LNPの開発:筋組織に対して指向性を有するペプチドを用いて、筋組織へ効率的な送達を可能とする筋ターゲティング型LNPの開発に取り組んだ。(1)で作製したLNPに対し、筋指向性ペプチドを修飾し、筋ターゲティング能の付与を試みた。筋指向性ペプチド修飾LNPをmdxに対して全身投与した結果、未修飾の場合と比較して筋組織においてより高い遺伝子導入活性を示した。 これらの結果より、筋指向性ペプチドを利用した、筋ターゲティング型LNPはDMD遺伝子治療のための基盤技術となり得ることが予想される。この基盤技術を基に、レポーター遺伝子から、治療用遺伝子へ変更することで、LNPの作製条件と治療効果の検討を行っている。
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