研究実績の概要 |
Cpeb4はCPE配列を含むmRNAに結合する因子であり,転写後調節を介して,がん系統分化や赤血球終末分化を制御する。以前,私は,Cpeb4が破骨細胞分化を促進する因子であることを報告したが,Cpeb4の詳細な分化メカニズムや標的遺伝子は不明であった。そこで,Cpeb4抑制時に遺伝子発現が減少した,破骨細胞マスター転写因子であるNfatc1に着目し,Cpeb4による転写後調節を検討した。shRNAによりCpeb4を抑制したRAW264.7株を用いて,RNA-seq解析およびqPCRを行った結果,未分化状態にも関わらず,破骨細胞分化遺伝子が有意に減少した。またRANKL刺激によるRANKL下流シグナル(p-Akt, p-IkB, p-JNK, p-p38)の活性が減少した。さらに,細胞増殖が促進していることが明らかになった。Nfatc1 mRNAおよびタンパク質量は,Cpeb4抑制により減少した。次に,Cpeb4がNfatc1の転写後調節を制御するかを検討した。転写阻害剤DRB処理後に残存するNfatc1 mRNA量をqPCRで検討したところ,Cpeb4抑制により安定性が減少した。しかしながら,Nfatc1の3’UTRをクローニングし,luciferase assayを行った結果,有意な差は見られなかった。そこで,Nfatc1の転写に着目し,Nfatc1の2種類のプロモーターP1およびP2の活性を検討するために,luciferase assayを行った。その結果,Cpeb4抑制により,P1活性が減少した。また,Cpeb4抑制によってP1領域におけるH3K4me3化の減少,H3K27me3化の増加が見られ,Nftac1転写が強力に抑制された。以上から,Cpeb4はNfatc1 mRNAの安定性を増加し,また転写を間接的に促進することで破骨細胞分化を促進することが示唆された。
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