Cpeb4はポリA鎖の伸長に関与し、スプライシングやmRNA安定性制御を担う因子である。これまでに、Cpeb4が破骨細胞分化過程で核内構造体を形成しスプライシングを制御する可能性を見出した。また、Cpeb4は破骨細胞分化前におけるNfatc1転写を間接的に制御することを見出したが、Cpeb4標的遺伝子や、転写後調節の詳細については不明であった。RNA-seq解析の結果、Cpeb4抑制により細胞周期が亢進する一方、スプライシング因子の発現がわずかに上昇した。破骨細胞分化関連遺伝子のスプライシングバリアント解析の結果、Cpeb4抑制により分化抑制因子Id2のイントロンを含む異常なスプライシングバリアントが増加した。以上より、Cpeb4は破骨細胞分化過程でスプライシングを部分的に制御する可能性が示唆された。RNA免疫沈降-seq解析を実施し、Cpeb4の標的候補遺伝子として127遺伝子を同定した。それらの多くは、「多核破骨細胞分化」や「MAPK経路制御」に関与した。これらの経路に属し、Nfatc1転写を担うFosl2に着目した結果、Cpeb4抑制により、Fosl2のポリA鎖長が減少し、mRNA安定性が減少した。以上より、Cpeb4は少なくともFosl2のポリA鎖伸長を介したmRNA安定化を担うことで間接的にNfatc1を制御する可能性が示唆された。最後に誘導性の全身Cpeb4 KOマウスを作製した。Cpeb4 KOメスマウスで骨量に顕著な差は見られなかったが、卵巣摘出(OVX)による閉経後骨粗鬆症モデルでは、Cpeb4 KOマウスでは骨量減少に対する抵抗性を示した。また脛骨における組織学的解析により、閉経後骨粗鬆モデルにおいて、Cpeb4 KOで破骨細胞数は減少し、骨芽細胞数は変化しなかった。本研究により、Cpeb4が破骨細胞分化制御を介して骨代謝を制御することが明らかになった。
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