研究課題/領域番号 |
22J01356
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山岸 弦記 東京理科大学, 先進工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | エストロゲン / g6pc1 / 卵胞サイクル / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、卵胞周期に応じたg6pc1重複遺伝子の発現変動と、重複遺伝子の転写制御領域の同定を目標とした。まず、ニホンヤモリで血中エストラジオール(E2)濃度を測定した。爬虫類の血中E2濃度は1ng/ml前後の値で変動することが報告されており、この範囲で測定可能なELISAキットでE2濃度を測定した。しかし、キットの測定下限を下回る値しか得られなかったため、特異性が高いLC-MSによる測定サービスを利用した。ニホンヤモリから得られる血液量は測定に不十分であったため、体サイズの大きいソメワケササクレヤモリを代わりに用いた。まず予備実験を行い、このヤモリがニホンヤモリと同様にエストロゲン応答が互いに異なる2つのg6pc1重複遺伝子を持つことを確認した。続いて、卵胞発育中の個体から採血し、E2濃度の測定を委託した結果、血中E2濃度は数pg /ml程度で、先行研究よりも大幅に低いことが明らかとなった。 次に、ソメワケササクレヤモリを用いて、卵胞周期に応じた血中E2濃度変動を測定した。このヤモリは飼育下で通年繁殖するが、非繁殖状態を人為的に導く方法は知見がない。そこで、原産地の気候を参考に、飼育温度を通常の30℃付近から1か月かけて20℃まで下げたところ、卵胞の退縮を確認できた。サンプルを卵胞期、排卵後、非繁殖状態に分けて解析したところ、血中E2濃度は非繁殖状態から卵胞期にかけて上昇し、排卵によって低下するという、卵生動物に一般的な変動パターンがみられた。さらに、g6pc1の発現を肝臓で定量したところ、2つの重複遺伝子とも、繁殖中の発現が非繁殖状態に比べて有意に高いことが明らかになった。一方、排卵の前後で発現に有意な差はみられなかった。 転写制御領域の同定については、開始コドン上流約2kbpの配列をクローニングしており、今後この配列をルシフェラーゼアッセイで解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は血中E2測定にELISAキットを用いる予定であったが、ヤモリの血中E2濃度が先行研究の値より1/100以下と低く、キットの測定下限を下回ることが明らかになった。そのため測定方法を変更し、LC-MS法に切り替えた。この際に必要な血液量が増加したため、体サイズの大きい動物(ソメワケササクレヤモリ)を使用する必要が生じ、動物数と基礎データの確保に時間を要した。また、qPCR用プライマーやノックダウン用のshRNA配列も再設計が必要となった。 また、遺伝子ノックダウン実験にアデノ随伴ウイルスを用いる予定であったが、ソメワケササクレヤモリでは肝臓への遺伝子導入が十分でなかった。ウイルス投与量を増やして対処しているが、それでも不十分な場合、肝臓に近い血管経由での投与を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)g6pc1重複遺伝子の発現制御領域とE2濃度依存性の応答をルシフェラーゼアッセイで解析する 2)遺伝子ノックダウンが可能なアデノ随伴ウイルスの投与量と投与経路を確立する 3)2)が確立次第、ノックダウン実験を行って、各重複遺伝子が寄与する代謝経路を明らかにする 4)ノックダウンによる行動量の変化を定量するため、行動観察装置を構築する
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