本研究の目的は,X_n=2cos(π/2^{n+1})に対して,拡張ペル方程式x^2-X_n^2y^2=1の求解アルゴリズムの構築と,そのウェーバー問題,岩澤理論や結び目理論への応用である.研究開始時点では,拡張ペル方程式の研究に不可欠と考えられる,拡張連分数展開がひとつ得られていた.またその過程で,代数体上のZ_p拡大の類数のp進収束性という興味深い現象が確認されていた.これらの背景をもとに,当該年度は次のような研究成果を得た. ・古典的ペル方程式に倣い,拡張ペル方程式の解の最小性を定式化し,小さなnに対しては,実際に最小解が解全体が生成することを確認した.これにより,拡張連分数展開の持つ近似論的な性質を最大限に生かせる土台ができ,次の研究への足掛かりが得られた. ・現状得られている拡張連分数展開とは異なるタイプの新しい拡張連分数展開が得られた.これにより,これまでは扱うことのできなかった,x^2-X_n^2y^2=-1というタイプの拡張ペル方程式も扱えることが可能となった.また,新しい拡張連分数展開は,ウェーバー問題の先行研究において中心的な役割を果たしてきた,堀江の単数と呼ばれる単数と密接な関係を持つことも分かり,ウェーバー問題への興味深い観点が得られた. ・類数のp進収束性について,代数体以外でも,古典的な関数体類似と数論的位相幾何学の精神に則り,関数体と3次元多様体に対して大幅に一般化して類似結果が得られた.特に関数体の定数的Z_p拡大と結び目で分岐するS^3のZ_p被覆については,類数のp進極限値の明示公式を与え,p進極限値と岩澤不変量との関係を明らかにした.
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