研究課題/領域番号 |
22KJ2816
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
塩野谷 果歩 東京理科大学, 創域理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / HBV / ウイルス侵入 / 受容体 / トロピズム / 宿主指向性 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の宿主指向性の解明を目指し、HBV侵入受容体ナトリウム-タウロコール酸共輸送体(NTCP)ホモログによるHBV感染制限機序の解析を進めた。HBVの感染宿主域は狭く、ヒトやチンパンジーには感染するが、これらと系統的に最も近縁な旧世界ザルのcynomolgus macaqueはHBVに対して感受性を示さない。これは、HBV表層抗原の一部であるpreS1領域がmacaque由来のNTCP(mNTCP)に吸着できないためであるが、なぜmNTCPがHBV preS1吸着を許容できないのか、その制限メカニズムは理解されていない。本研究では、mNTCPによるHBV吸着および感染制限機序を解明することを目的とした。 クライオ電子顕微鏡解析によってmNTCP-胆汁酸複合体の立体構造を明らかにした(共同研究先)。mNTCP-胆汁酸複合体に、ヒトNTCP-preS1複合体構造のpreS1構造を仮想的に重ね合わせると、mNTCPのArg158がpreS1主鎖と立体障害を起こしていることが明らかとなった。mNTCP aa 158を19アミノ酸すべてに置換したmNTCP変異体を作出し、これらのpreS1吸着能を調べたところ、ヒト型のグリシンのみがpreS1吸着活性を示した。 mNTCPのaa 86およびaa 158をヒト型に置換した二重ヒト化変異は、aa 158単独ヒト化変異に比べ、preS1吸着およびHBV感染感受性を上昇させた。分子動力学シミュレーションによって、aa 86にヒト型のリジンを有することが、preS1の安定的な結合に寄与することが示された(共同研究先)。本研究において、NTCPの異なる2箇所における協調的なpreS1-NTCP結合様式が明らかとなり、mNTCPではこの2箇所における制限がHBV感染に対する分子バリアとなっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である「B型肝炎ウイルス(HBV)侵入過程における受容体共役因子の役割と制御機構に関する研究」は、HBV侵入における受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の役割とその制御機序を解明することを目的としている。研究課題は、HBV吸着後過程に寄与するRTKに着目した解析を行うことで、HBV感染成立、宿主の感染感受性、HBVの細胞指向性決定原理を理解することを目指しているが、本年度行ったHBV侵入受容体ナトリウム-タウロコール酸共輸送体(NTCP)ホモログによるHBV感染制限機序の解析では、ウイルス吸着過程におけるHBV制限メカニズムを明らかにしており、こうした本年度の研究成果はHBVの細胞指向性・宿主指向性を理解するための重要な知見を提供するだけでなく、ウイルス吸着後過程におけるHBV感染制限に着目した研究課題の発展にも貢献すると考えているため、研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までにAlphaScreen法でEGFR結合親和性が高かったEGFRユビキチン化酵素(E3リガーゼ)のうち、遺伝子ノックダウンによってHBV感染許容細胞でHBV感染を低下させた5つのE3リガーゼのEGFR結合能およびEGFRユビキチン化能を評価した。HBVエンベロープタンパク質の一部を模倣したペプチドプローブとHBV感染許容細胞株を用いた共焦点顕微鏡解析により、EGFR結合能およびEGFRユビキチン化能が確認できている候補E3リガーゼのHBVエンドソーム輸送の制御段階を評価したが、遺伝子ノックダウンでは表現系が見づらく、現在、これら候補E3リガーゼのノックアウト細胞の取得を試みている。ノックアウト細胞を使ってもなお候補E3リガーゼの細胞内HBV輸送への影響を評価しづらい場合は、本年度の研究成果を踏まえ、HBV吸着は成立するが感染は成立しない動物種(HBV吸着後過程がウイルス感染の制限となっている動物種)を同定し、それら動物種が有するHBV侵入受容体ホモログやRTKに着目することで、HBV感染成立、宿主の感染感受性、HBVの細胞指向性決定原理を理解することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度(2024年度)は、研究成果発表の場として例年よりも多く国際学会に参加する予定があるため、繰越分については主にそのための旅費として使用する予定である。
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