甲虫の体色は非常に多様であり、鮮やかな体色は警告色と考えられている。しかし、単一な環境であった場合、野外の多種多様な警告色がなぜ維持されているか説明できない。本研究では、異所的に体色多型があるマイマイカブリの活動時間帯と捕食者、地理的な環境要因の違いに着目した。まず本研究では、マイマイカブリの体色は構造色により発色しているため、デジタル画像から構造色の発色特性である、「明るさ」「色相」「虹色」の定量化を行う。その上で、各地域でサンプリングされたマイマイカブリの体色と地表徘徊性の甲虫に重要な環境要因との相関関係を調べる。同時に、各亜種集団の野外調査と実験室下での行動実験を行うことで、マイマイカブリの活動時間と体色の関係を明らかにする。 今年度は、マイマイカブリの活動時間を調査するため野外調査を実施した。体色の異なる4亜種(ホンマイマイカブリ、ヒメマイマイカブリ、アオマイマイカブリ、コアオマイマイカブリ)が分布する地域で、ピットホールトラップを実施したところ、亜種間で活動時間に違いがあることが、一般化線形混合モデル(GLMM)による解析によって明らかとなった。さらに、上記4亜種とエゾマイマイカブリ、キタマイマイカブリを加えた6亜種の集団を、温度と日長を一定に保った室内環境で繁殖させ、行動実験により活動時間を調べたところ、野外調査と同様に活動時間が亜種間で異なることが統計解析により明らかとなった。さらに餌であるカタツムリの採餌時間を亜種ごとに調べたところ、カタツムリの採餌時間が各亜種で異なることが示された。これら結果から、亜種間の活動時間は採餌時間が異なることで生じている可能性がある。
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